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〈亡者達の誘う地〜刑事・銭森四姉妹〉
【鬼畜 官能小説】

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〈ホールドアップ!!〉-1

春奈は身を屈めて事務所のドアの前に進み、景子は少しだけ金網の扉を開けて港内へと潜り込んだ。
港には外灯があるが、その殆どは暗闇を良しとし、景子の侵入を捗らせていた。
無勢が多勢に立ち向かう時、勝機を掴むには、やはり奇襲であろう。

景子は港のあちこちに積まれ、ぼんやりと外灯に照される原木の山やローダーなどの重機に身を隠して、貨物船へと駆けていく。
さすがにかなり広い港の敷地では、簡単に目的地まで辿り着くとはいかず、少しずつだが息が上がり始めた。
煌々と照らされた貨物船の上には人影は見えず、きっと船内で優愛に卑劣な行為に及んでいるのだ……景子は拳銃を握りしめ、全力で駆けた……。



(喜多川先輩、八代なんかに負けないで……麻里子お姉さん…私に力を貸して…!!)


春奈は深く息を吸い、唇を噛み締めた。
このドアの向こうには、姉妹や文乃、そして優愛を始めとした数々の女性達を拉致した犯罪者達がいる……いよいよ仇敵に、正義の鉄槌を下す時が訪れたのだ。ドアノブに手を掛け、静かに捻る……白い光が暗闇の中の少女を照らした……。


「警察よ!!みんな動かないで!!」

『!!!』


そこでは、昨夜と同じ面々が、驚いた顔をして春奈を見ていた。
コーヒーの芳ばしい薫りが漂い、金髪の男はコーヒーカップを手にしたままポカンとして立ち尽くしていた。


『……あの…君は何しに来たの?』


金髪男は状況が飲み込めてないらしく、間抜けな顔のまま春奈を見つめていた。


「貴方達を逮捕するのよ!!手を上げなさい!!」


目の高さに固定された拳銃は両手で保持され、肩幅より少しだけ広げた足は、軽く曲げられて腰を落としている。
極めてオーソドックスな射撃姿勢は、その照準をピタリと専務に合わせている。一連の犯罪の首謀者が、この男だと判ったからだ。


『警官ごっこでちゅか?僕ちゃんが警官の役をやりたいでちゅ』


専務の幼稚な嘲りに、部下達はゲラゲラと笑った。
沸き上がる嘲笑に、春奈は上唇を尖らせ、それでも視線は真っ直ぐに専務を貫く。

この状況になっても、まだ専務達は春奈を嘗めてかかっている。
自分の弱さを拳銃を見せる事で誤魔化し、その威圧だけで偉そうに刑事を気取っているとしか思っていなかった。


『君を逮捕して、いろんなトコロを“取り調べ”したいでちゅ〜』


この事務所の近くには景子の気配は感じられないし、それに、さっき捕まえた妹の優愛を人質にすれば、美津紀や麻里子のように、容易く捕らえられる。
しかも今回は八代もいるのだ。

専務は必勝を信じて疑わなかった。

だからこそ、突然の春奈の突入にも、余裕綽々なのだ。



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