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女子大生 成宮恵理
【女性向け 官能小説】

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女子大生 成宮恵理-33

悠一郎からはその日の内にメールがあった。『大丈夫だった?』と。

恵理はそれに対して『うん、大丈夫だったよ』と返信したが、たったそれだけの文章なのに書いては消し、書いては消しを繰り返して、返信にするのに何時間も掛かってしまった。

大丈夫って、何が大丈夫なんだろう。

奈々に昨日の事がバレていないという意味ならば、大丈夫なのかもしれない。

でも奈々に嘘をついて騙して、それに気付いていない奈々を見てホッとしているような自分が嫌だった。

本当は、大丈夫だけど大丈夫じゃないって言いたかった。

その後悠一郎からは雨宿りさせてくれてありがとうという事と、酒に酔っていたとはいえ悪かった、ごめん、というメールが送られてきた。

それに対しては、恵理は結局なにも返信する事はできなかった。

ショックだったから。

悠一郎にとってあの夜の事は、お酒に酔っての出来事だったのだと。


俺、恵理の事好きだし


悠一郎のあの言葉はいったいなんだったんだろう。

ソファの上に体育座りになって小さくなる恵理。口を膝に当てながら、テーブルの一点だけをじーっと見つめる。

昨日は隣に悠一郎が居てくれた。

あの声、あの匂い、あの体温、そして肌と肌で感じた、あの感触。

心まで溶け合って、一つになった気がしてた。

でも、今は悠一郎の心が分からない。

呆然としていた恵理の目から、涙がポロポロと零れる。

悠一郎は軽い気持ちでいたのかもしれない。

でも自分はどうだろう。

親友から恋人を奪おうとしたの?違う。

一夜限りの関係で良いと思ったの?違う。

でも親友を裏切った事に違いはない。

悠一郎は恋人を裏切り、恵理は親友を裏切った。2人は共犯者だ。

だから裏切り者同士、いつ相手に裏切られても仕方ないのかもしれない。

でも嫌だ。あの言葉が嘘だったなんて思いたくない。

そうやって悠一郎の事ばかりを考えていると、いつの間にかまた奈々の事を忘れてしまっていて、自分の感情を優先してしまう。

世界で私が一番可哀想だって、被害者ぶりたくなる。

ただ好きだった。ただ好きで好きで堪らなくて、寂しかった。

今でも、もし悠一郎が突然現れて「一緒にどこか遠くへ逃げてしまおう!」と言われたら、きっと奈々を置き去りにして付いて行ってしまうに違いないし、それを心のどこかで期待している自分が今もいる。

私って最低。




台風の日から数ヶ月、恵理はあの日以来、殆ど悠一郎と接触する事はなかった。

大学で悠一郎の姿を見かけても、恵理はわざと悠一郎を避けるようにしてしていた。

本当は悠一郎の事が気になって気になって仕方なかったけれど、こちらから話しかける勇気はなかったし、悠一郎から話しかけてくる事もなかった。

奈々と悠一郎の付き合いはしばらく続いていた。でもあの日以来悠一郎はアパートに来ていない。

恵理はその原因が自分にある事を確信していたが、奈々はそれには全く気付いていないようで、ただ「最近全然会ってくれない」と不満がってた。

そして、この3人の複雑な関係にとうとう終わりが訪れる。


それはある日の夜の事だった。

恵理がアパートの部屋で一人で過ごしていたところ、突然部屋の呼び出し音が鳴った。

時間は0時を過ぎた深夜だ。

誰だろうと恵理がドアに近づくと、外から奈々の弱々しい声が。


「恵理ぃ……ぅぅ……ぅ……」


それを聞いて何事かと思った恵理がドアを開けると、そこには顔をクシャクシャにして泣いている奈々が立っていた。


「ど、どうしたの!?」


目を丸くして驚く恵理。


「ぅぅ……ぅぅ……」


「奈々、どうしたの一体……とにかく入って、ね?話聞くから。」


恵理は喋れないほど泣きじゃくっていた奈々を気遣うようにして部屋に入れた。

そして恵理はこの前自分がしてもらったように、温かい飲み物を入れて奈々に出した。




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