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アイツがあたしにくれた夏
【コメディ 恋愛小説】

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誠意のカタチ-2

自分の気持ちを翔平に正直にぶつけた結果、彼はあたしを受け入れてくれた。


いい人でいようとするズルさ、自分の気持ちに嘘を吐いてしまった後悔、そして好きな人に好きと言う勇気。


今までのあたしなら形振り構わず自分をさらけ出す真似出来なかったけど、この夏であたしは一皮剥けた……ような気がする。


恋人ごっこなんかじゃない、本物の恋人になれたことがなんだか照れ臭くて、なかなか周りにカミングアウト出来なかったあたし達だけど、やっとの思いで絹子に報告した時には、


「くっつくのが遅いんですけど」


なんて、ブーイングされたっけ。


あからさまな態度の翔平はともかくとして、自分でも気付かなかった気持ちまで、スウィングのみんなはとうの昔に知っていたらしい。


冷やかされっぱなしのあたし達はみんなからの祝福を受け、これから楽しくなるなあ……なんて浮き足立っていたけれど……。


あたしは、未だ空席のままの、伏せられていたグラスに目を移す。


すると、あたしの考えていることを見透かしたように、絹子が


「……松本、やっぱり来なかったね」


と、呟いた。





翔平は、里穂ちゃんの告白を断るときに、キッパリとあたしが好きだから付き合えないって言ったそうだ。


変に期待させる方が残酷だからと、それが里穂ちゃんに対する彼なりの誠意のカタチなんだとか。


そして、結局スウィングを辞めるのを撤回しなかった翔平を見てはあたしは思う。


あたしに振られたせいでも、里穂ちゃんと顔を合わせるのが気まずいからでもない、元々夏が終わったら辞めるつもりだった、と翔平は言うけれど。


自分がいつまでもスウィングに残っていたら、里穂ちゃんが諦められるものも諦められないんじゃないか、ってそんな風に考えていたんじゃないかな。


逃げとも取れるかもしれないけれど、不器用なりに彼は里穂ちゃんに誠意を見せた結果だと思う。


……じゃあ、あたしはと言うと。





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