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アイツがあたしにくれた夏
【コメディ 恋愛小説】

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誠意のカタチ-12

またまた石のように固まるあたしに、里穂ちゃんがギュウッと抱き付いてきた。


意外と大きな胸があたしの胸のあたりでムニュッと押し潰される感覚に、不覚にもドキッとする。


「ま、松本! お前、小夜から離れろ!」


「やーですよう」


ンベッと舌を出す里穂ちゃんは、次にあたしの顔を上目遣いで覗き込んでくる。


ウルウル瞳の上目遣い。翔平が告白された時に披露されたらしい最強コンボがあたしに向けられた。


「小夜さん……、あたし、あなたに意地悪してた時からずっとあなたで頭の中がいっぱいでした。あの時は憎いって感情しかなかったはずなのに、こないだスタッフルームで助けてもらってから変な気持ちが沸き上がってきた気がして……。それから寝ても覚めても小夜さんのことばかりが頭から離れなくなったんです。きっと、あたし……」


「え? な、何?」


「いつの間にか駿河さんより小夜さんのことが好きになってたみたいです!」


「「「えええええっ!!??」」」


あたしだけじゃない、翔平も、絹子も、その場にいた誰もが大きな声を上げていた。


「だ、駄目に決まってんだろ!」


次の瞬間、翔平が里穂ちゃんを引き剥がし、あたしを自分の背中の陰に隠していた。


「ええ、何でですか?」


「何でって……、小夜と付き合ってんのは俺だし、そもそもお前は女だろ!」


すると、彼女はむくれたように口を尖らせる。


「わかりましたよ、じゃあお友達として、これから小夜さんと仲良くさせてもらいますから」


そして、翔平の背中に廻りこんだ彼女はあたしの手を握ると、ニッコリ笑った。


「小夜さん、今度うちに遊びに来ませんか? もちろん泊まりで! たまに両親が仕事でいない日があって、一人だと怖いんですよ」


「あ、あの……」


「ね、うちのお風呂結構広いんです。一緒に身体を流し合いっこしましょ」


あたしの手に指を絡ませるその仕草はどう見ても友達に対してするものじゃない。


愛らしい笑顔のバックには、百合の花が咲き乱れているような気がした。










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