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アイツがあたしにくれた夏
【コメディ 恋愛小説】

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誠意のカタチ-11

「だから本来ならあたしが退くべきなのに、それができずに二人が幸せになるのが許せないからって、散々八つ当たりしてたあたしは、ホントにバカで最低でした」


涙をポロポロ溢しながら謝る姿に、みんなの視線が集まる。


みんなの前で謝罪なんて怖くて仕方ないだろうに、里穂ちゃんはしっかりあたしの目を見ながら告白する姿に胸が打たれた。


「でも小夜さんはあたしから逃げずにいてくれた。身体を張ってあたしを助けてくれた。……そこでやっと気付きました。自分のしてたことの愚かさ。小夜さんはこんな素敵な人だから、駿河さんが好きになったんだって」


「里穂ちゃん……」


そこまで言うと彼女は、恥ずかしさからなのか顔を紅潮させて、ほんのりはにかんだ。


その表情に、なんだか目の奥が熱くなる。


そしてあたしも口を開かずにはいられなかった。


「あたしこそ、ホントにごめんね……。最初から自分の気持ちを里穂ちゃんに打ち明けてたら、里穂ちゃんをこんなに傷つけなくて済んだのに……」


「そんなことないです! すべてはあたしのワガママで小夜さんを振り回していたんだから、悪いのは全部あたしなんです! ごめんなさい、小夜さん」


「もう謝んないでよ、あたしも悪かったんだから」


「いえ、あたしです」


謝り合戦はしばらく続いていて、ついに見かねた絹子が、


「ねえ、二人ともしつこいから、そろそろ仲直りの握手でもして終わりにしたら?」


と、向かい合うあたし達の間に立って二人の顔を、と見こう見した。


言われたあたしと里穂ちゃんは、顔を見合わせてからフフッと肩を竦めて笑う。


「小夜さん……あたし、散々酷いことして自分勝手かもしれないけど……また、前みたいに仲良くしてくれませんか?」


「里穂ちゃん、ありがとう……。こちらこそ」


そう言って、おずおずと彼女が差し出してきた手を固く握り締めて握手をした瞬間、周囲から温かい拍手が鳴り響いてきた。


よかった、里穂ちゃんと仲直りできて……。


もう一方の手で、目元をグリグリ擦りながら翔平を見る……と。


みんな嬉しそうに笑っている中で、彼だけがムスッとした表情で、里穂ちゃんを冷ややかに見つめていた。


「……松本」


抑揚のない低い声。これは翔平が怒っているときの特徴だ。


「何ですか?」


対して、里穂ちゃんはすっかり以前の愛くるしさ全開で微笑んで見せている。


「小夜と和解したのは、俺だって嬉しいよ。でも、その前。ここにやってきて、最初に小夜に何した?」


「ああ、これですか?」


翔平の言わんとしていることを理解した彼女は、ニッと笑うと再びあたしにチュッとキスをした。


「あああっ!!」


クールで通してるはずの翔平の、裏返った声がお座敷にこだました。




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