名前で呼んで-5
「あたし、ずっと駿河が好きでした。里穂ちゃんに応援してほしいって言われて、自分の気持ちにうっすら気付いていながらも気付いていない振りして、イイ人でいようと思っていたけど、本当に好きな人に嫌われてしまうくらいなら、卑怯でも後出しでも、もう構わない! あたし、駿河が好き、大好き!!」
もはや号泣と言っていいくらいに泣き喚きながら告げた想いは、誰もいなくなったショッピングモールの片隅に響いていた。
バカみたいにデカい声は、もしかしたらすぐ目の前の通りを歩いている人に筒抜けになっているかもしれない。
でも、もう駿河以外目に入らなかったあたしには、そんなことはもうどうでもよかった。
とにかくあたしが駿河をどれほど好きか、知って欲しかった。
言い切った感でヘナヘナ力が抜けそうになるあたしを、駿河が慌てて支えてくれる。
でも、変な時に正気が働くもので、咄嗟に抱き留められたあたしは目を見開いて慌てて彼の身体を跳ねのけようとしてしまった。
「やっ……! 駿河、鼻水ついちゃう!!」
そう、あたしは涙だけじゃなく、鼻水を垂らしながらのとんでもなくダサい告白をしていたのだ。
抱き締めてくれるのは嬉しいけど、汚い顔に触れて欲しくない。
そう思って彼の身体を振り払うつもりだったのに、駿河は
「構わねえよ」
と、ただそう言ってあたしをギュッと抱きしめてくれた。