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アイツがあたしにくれた夏
【コメディ 恋愛小説】

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名前で呼んで-2

ムカつく……!


だけど、颯爽と去っていく店長の後ろ姿を眺めるあたしは自然とにやけてしまう。


シャーッとタイヤがアスファルトの上を滑る音を聞きながら、コソコソスマホをいじくっていたさっきの店長の姿を思い出していた。


きっとあれは奥さんにメールじゃなかったんだよね?


あたしは心の中で「ありがとう」と、店長にお礼を唱えながら、小さくなる後ろ姿に頭を下げた。








店長がいなくなると、やけに静寂が耳を痛くする。


営業時間を終えたレンタル店もすっかり電気が消えてしまって、ショッピングモールは各テナントの非常灯や外灯だけが寂しく照らす、薄暗い空間へと表情を変えていた。


すっかり車の往来も少なくなって、車がアスファルトの上を走る音が、都会の闇に時折響く。


そんな音を聞いていると、今まで黙っていた駿河がゆっくりあたしの顔を見下ろした。


「……立てるか?」


「…………」


声の柔らかさで、いつもの優しいアイツだと確信する。


その声に、店長のおかげで引っ込んでいた涙が再び溢れてきそうになる。


こんなの堪えなきゃ。今泣いたら、きっとちゃんと告白なんてできっこない。


なんとか歯を食い縛って崩壊寸前の涙腺の刺激に堪えていると。


「ほら、早く駅に行かないと、最終出ちまうぞ」


そう言って彼は呆れたように笑ってあたしの腕を掴んで立たせようとした。


その瞬間、今まで抱えていた想いが一気に飛び出してくる。


その笑顔が、触れた手が、ずっと欲しかった。


気付けば、あたしは駿河の胸に飛び込んでいた。


「うおっ!?」


そして、倒れそうになるのをなんとか踏み止まった彼は、しっかりとあたしを受け止めたかと思うと、そのままキツく抱き締めてくれた。


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