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不貞の代償
【寝とり/寝取られ 官能小説】

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不穏-2

「珍しいね、僕を誘ってくれるなんて」
 二人は居酒屋のカウンターに並んで座った。
「今日は思ったより早く終わったから、まあ、ちょっとね。佐伯君は家庭持ちなので悪かったかな」
「いやいや、そんなことはないさ、全然大丈夫」義雄は手を振って強調し、「僕たち二人だけで仕事をするのは初めてだね。君と飲むのも初めてだしね。誘ってくれてうれしいよ」――などと、お世辞も交え、軽くジョッキを当てた。
「大学で学部もクラスも同じだったし、同じ会社で同じフロアだなんて、君とはなんだか縁があるね。これからもちょくちょく飲みに行きたいな。とはいうけど僕はお酒はあんまり強くないんだ。君は強いんだろう? 酒豪だって聞いているよ」
 あっという間に半分ほど飲み干した石橋のジョッキを見て目を丸くする。
「それにしても君は仕事ができるなあ。すごいよ。同期なのにずっと先を越された気分だよ。きっと僕なんかより出世するんだろうな」
 石橋が独身なのは知っているし、先ほどの『家庭持ちなので悪かったかな』といった気遣いに後ろめたさを感じ、自分でも驚くほど饒舌だった。
「そんなことないよ」
 石橋が白い歯を見せた。
「これで、お嫁さんでも見つかれば御の字なんだが、ははは」
「何を言ってるんだい、見つかるさ。決まっているじゃないか」
 慌てた義雄は石橋の肩をポンと叩いた。
「そうかなぁ」
 石橋は照れながらツマミとジョッキの追加を頼んでいる。機嫌はいいのでホッとした。石橋はよく飲みよく食べる。義雄の最初のジョッキがまだ半分残っているのに、もう二杯目を空にしている。
 石橋が三杯目を頼んでいるときに義雄のケータイが鳴った。「ちょっと失礼」――と言って背を向けてケータイを耳にあて、反対側に体を倒し、口元を手で覆った。
「今、会社の人と飲んでいるんだ……うん……帰るときにまた電話するから……うん、そうだね。そうするから……それじゃ」
 会話を終え、「失礼」――と言って、通話を切って顔をあげると目の前に石橋の顔があった。酔いのせいで充血していて、涙目のようだ。
「進藤さんから?」
 焼き鳥をつかんだはずが、ポロリと落ちた。それを拾うため、慌てて屈み込む。椅子が高いので手を伸ばしても届かない。
「あんなに綺麗で優しい奥さんもらって羨ましいよ」
 焼き鳥を拾って起き上がるとき、カウンターに頭をぶつけた。


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