クラスタ-2
魔物の下から救い出されたテオは、ノアに浄化の魔法をかけてもらい綺麗になる。
倒した魔物は軽く土を掛けて放置。
その内、動物や肉食植物や魔物などが処理してくれるだろう。
「キツくなってきたなぁ」
軽い傷をリュディに治療してもらいながらテオは呟いた。
ノアの魔法ならちょちょいで治るが、魔力は出来るだけ温存しておきたい。
それにリュディの調合する薬は天下一品。
命に係わる重傷以外ならリュディの薬で充分だ。
「いやいや、大分腕を上げたねぇテオドア」
ランスは弓を肩に置いてヘラヘラと歩み寄る。
「ランスもな……へっぽこ射手だったクセに」
昔は在らぬ方向に矢が飛んでいたものだが、魔物の『核』を狙い撃ち出来るなんて大したものだ。
「ははは、ありがとう」
ランスがひょいっと左手を動かすと、手の中の弓がシュッと消える。
消えた先は左中指に着けている指輪。
その魔法の指輪に弓を入れてあるのだ。
ちなみに、右中指にも同じような指輪があり、こっちには矢が入っている。
「はい……終わり」
腕の切傷に包帯を巻いたリュディが、ぽんとそこを叩いて合図を送った。
「サンキュー」
テオはにかーっと笑ってお礼を言うと、腕をぐるぐる回す。
(……やっぱり可愛い……)
恋愛感情は別にして、テオの仕草ひとつひとつに萌えてしまう。
可愛い弟といった感じだ。
「パルはどんな?」
ぐっぐっと屈伸したテオはリュディの顔を覗き込む。
「……必死……って感じ」
クラスタ領地に入ってからパルは変わった。
まず、固形物を食べれるようになった。
何か美味しそう、と果物から始まり、パンや干し肉……今や好物は肉汁滴る串焼き肉だ。
ノアによると、クラスタの海に在る『黒海』の影響ではないかという話だ。
『黒海』には魔力のエネルギーが濃く溶け込んでいる。
そこから溢れるエネルギーが魔物に力を与える。
そのエネルギーは人間の使う魔力とは質が違うらしく、ノアにはあまり影響は出ないらしい。
そして、パルが何に必死なのかと言うと、自分から漏れ出す魔力を抑えるのに必死なのだ。
以前、ランスが言ったようにパルは魔力を抑えるのが苦手だった。