クラスタ-18
「うわ……リュディ陥落?」
「ああ毎日毎日触られまくったら慣れちまって暴走もしねぇしな……ノアの入れ知恵か?」
「女性の口説き方なんか知りませんよ。ボクはまだ子供ですし」
「はっ。良く言うぜ」
腕を組んでパーティー会場の前に進む2人を見送りながら、残った3人はお互い顔を見合わせて肩をすくめた。
「……似合ってんな」
パルを上から下まで舐める様に見たテオは、にやっと笑って彼女を褒めた。
パルもきちんとタキシードを着こんだテオを見てにこぉっと笑う。
「テオもいつもと違って益々美味しそう♪」
食べ物は綺麗に飾り付けられていた方が見た目にも美味しそう。
「お前な……」
「褒め言葉だよ?」
確かに、パルにとってはそうなのだろうが……まあ、良い。
「さ、しゃあねぇからエスコートしてやる。腕出せ」
パルはリュディの真似をして、差し出されたテオの腕に手を絡め、これで良いか?と首を傾げつつ微笑んだ。
(あ、くそっ可愛いな、おい)
そういえば屈託の無いパルの笑顔を見るのは本当に久しぶりだ。
テオは少し赤くなった顔を誤魔化すように前を向き、パルをエスコートして進む。
その様子を見ていたバートンは、ムズ痒さに自分の腕をポリポリ掻いた。
(恋に不器用なのは育ての親に似たか……)
人の事は言えないが、テオも彼の育ての親も不器用具合が分かり易い。
端から見ててイライラするし、モヤモヤする。
(まあ……生粋の魔物相手じゃ空気読めってのも無理な話か……)
テオの育ての父親は魔物とはいえ元は人間だ。
身体の作りは魔物だが精神は完全に人間……そこがパルとは違う。
(……それでも愛しいって思えりゃ……本物だな)
バートンの経験上、愛したら最後相手がどうなろうと関係無い……例え死体であろうと構わない。
「さあ、主役達も揃った!乾杯しよう!」
デレクシスの声でバートンはハッと我に返る。
会場の中心でデレクシスがグラスを掲げ、わあっと会場が盛り上がっていた。
(……ま、頑張れや。我が息子よ)
赤い眼の自分そっくりな息子に、バートンは無責任なエールを送るようにグラスを掲げるのであった。