クラスタ-13
「隠されりゃ気になるじゃん?余程ろくでもない男なのかなあ〜とか、逆に無茶苦茶偉い貴族とかなのかなあ〜とかさ」
しかし、出会ってみるとバートンはいたって普通の人間だった。
「何で黙ってんのか分かんねぇ」
むむむ、と眉を寄せるテオの顔は何か見えないものでも探すような目付きだ。
「そうだなあ……正直ちょっと複雑っちゃ複雑だな」
「そうなのか?」
「ああ、まずバートンは偽名だ。本名はスランバート」
バートンの本名を聞いたテオは、飲みかけていたお茶を吹き出す。
「げほっ……スランバートって『ログの黒い鷹』?!」
「何だ?知ってるのか?」
知ってるも何も、小さい頃聞いた冒険話によく出てきた暗殺者だ。
特に父親の話す暗殺者『ログの黒い鷹』はカッコよくてスマートで……正直、テオの憧れだった。
「うわ……すげぇ……」
その憧れの人物が目の前に居て、しかも自分の父親で……テオの頭の中は軽くお祭り騒ぎだ。
「まあ、知ってるなら話は早いが『ログの黒い鷹』スランバートはもう死んでる筈だから偽名を使ってる。その点カリオペと一緒だな」
テオの母親であるカリオペも元暗殺者で『赤眼のカリオペ』と呼ばれ、その世界では有名人だった。
しかし、組織を脱走していたのを見つかり、アジトに連れ帰られて処刑される寸前、テオの育ての魔物父と目の前に居る『ログの黒い鷹』の協力で助かったのだ。
その時、『ログの黒い鷹』も『赤眼のカリオペ』も死んだ事になっている……お互い、死人だ。
その話も、テオは何度も聞いて良く知っている。
それに、魔物父が覚え書きをノートに記していた。
ノートの表紙には『アンバランス×トリップ』と書いてあり、意味は?と聞くと「アンバランスな奴らのちょっとした旅かな?」だそうだ。
閑話休題
「父親としては話されて無いみたいだが、スランバートの事は聞いてんだな……どこまで知ってる?」
テオは彼が知っている……両親が話してくれた冒険話をした。
バートンはそれを聞きながら、懐かしそうに頷いたり笑ったりする。
「じゃあ、そのスランバートが父親だと分かった今。お前どう思う?」
ひと通り話が終わった時、バートンは可笑しそうにテオに質問した。