クラスタ-12
「紅茶でいいか?」
「ああ、うん」
奥にある台所からシュンシュンとお湯を沸かす音が聞こえ、テオはそっちに足を向けた。
「手伝う?」
「ああ、なら戸棚に焼き菓子があるから」
「皿はここの使っていいか?」
「ああ」
戸棚から焼き菓子を取り出して皿に盛り付けたテオは、カウンターにあった果物を勝手に拝借する。
懐からダガーを取り出して果物を剥き、焼き菓子に添えるとぐんと見栄えが良くなった。
「カリ……母さんのダガーだな」
その様子を見ていたバートンはテオのダガーを指差す。
「ああ、鏡台の引き出しにあったの勝手に盗ってきた」
バレたら殺される、とテオはぶるっと身体を震わせた。
「バレなきゃ良いだろ」
「まあな」
ポットに茶葉を入れたバートンは、そこにお湯を注ぎついでにカップにもお湯を入れて温める。
時間をきっちり計って入れられた紅茶は、香りがとても良かった。
「ほい」
「どうも」
カウンター席にテオが座り、バートンは立ったまま流しにもたれてお茶を頂く。
「カ……母さんと父さんは元気か?」
「名前で良いよ。言い難いだろ?」
さっきから母さんと言おうとする度に名前を言いそうになっているバートンにテオは苦笑した。
「カリオペ母さんは元気だよ。相変わらず巨乳のデカ尻だけど、喫茶の方頑張ってる。ゼイン父さんもチビなままだけど元気。たまに魔物に変わって走り回ったりするけどな」
「そうか……」
テオの両親の事を聞いたバートンは、相変わらずらしい2人にニコニコする。
「テオドアは何でここに?」
「冒険者に憧れたのもあるんだけど……アンタに会いにきたんだ」
「俺に?」
バートンは紅茶を啜りつつ首を傾げた。
「何でまた」
「うちの親にアンタの事聞いても答えてくんねぇんだよ。母さんはムッチャ不機嫌になるし、父さんは苦笑いしかしねぇ……なあ?うちの親とアンタってどういう関係なワケ?」
テオはカウンターに両肘をついて、その手に顎を乗せる。
「全然、聞いてないのか?」
「父さんがホントの父親じゃないって事と、ホントの父親はクラスタに居るっつう事ぐらいかな?」
ぶっちゃけ名前さえ聞いてない……こんな微々たる情報だけで探すつもりだったのだ。
無謀にもほどがある。