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アネクメネ・オアシス
【ファンタジー 官能小説】

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クラスタ-11


(心の準備が全然出来てねぇんだけど?!)

 クラスタ要塞に着いた途端、いきなり父親に会うとは思っていなかった。
 何か色々聞きたかったし、怒っていたような気もするのだが頭の中が真っ白。
 いったいどういう態度を取るべきかも分からない。
 軽くパニクるテオの目に、リュディと腕を組むパルの姿が見えた。

(あ……元気になったんだ……)

 すっかりいつもの様子のパルは、テオと目が合うとパチンとウインクして見せる。
 からかい混じりのそれにテオは苦笑を返してバートンに着いて行った。

(ま、成るように成るさ)

 出会ってしまったのはしょうがない。
 母と父が教えるのを頑なに拒んできたテオの父親の事を、父親本人に聞けるのだから良しとする。
 パルの元気そうな姿を見たら、何となくそう思えたテオなのだった。

 クラスタ要塞は簡単に言えば巨大な壁だ。
 その壁の中に居住区があったり、研究施設があったりする。
 地下には巨大な魔物に対抗出来る重火器を作る施設もあるそうだ。
 その重火器は火薬などを組み合わせているもので、魔力を持っていない人間でも使い方次第で強力な武器になるらしい。

 そんな風にクラスタ要塞の事を説明しながら歩くバートンは、ずっとテオの手を握ったままだ。

「あのさ……」

「ん?」

 いい加減恥ずかしくなって、テオは少し手を引く。

「逃げねぇから離してくんね?」

「ああ、悪い。俺の中じゃまだ3歳の坊主なもんだから」

 そういえば17歳だったな、とバートンはテオの手を離した。
 テオは離された手をじっと見る。
 やはり魔物父とは違う感触なのだが、伝わる温もりが同じだった。

「こっちだぞ」

 ぼうっとしていたら置いていかれそうになり、慌てて追いかける。

「やっぱ、手ぇ繋ぐか?」

 喉で笑うバートンをテオは軽く睨んだ。

「ククク、ここが俺の部屋だ。どうぞ」

 居住区の奥まった場所にある黒い扉には、鷹の絵が浮き彫りされている。
 鍵を開けて中に入ったバートンは、扉を押さえてテオを招き入れた。
 部屋の中は飾り気のない質素な感じ。
 キョロキョロしていたら壁にぶら下がっている革紐のネックレスに目が止まった。
 ただの革紐に鳥の羽根がくくりつけられただけのものだったが、大事にしているんだろうなと何となく分かる。



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