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不貞の代償
【寝とり/寝取られ 官能小説】

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威圧-5

「沼田さんはいかがかな?」
「女性ですか? わたしはダメです、もう全く全然ダメです。あっちの方は適当に処理していますが。えへへ……」
 岩井に話しかけられるのがうれしいのか、いらぬことまで口走る。
「ほう、沼田さんはまだまだ健在ですな。それはうらやましいかぎり。この年になってもこの手の話は好きでのう。いかんですかな?」
「とんでもございません。わたくしめも大好きでして」
 いそいそとビール瓶を手に取る。
「沼田さんはどんなおなごが好みですかな。艶のある年増はいかがかのう」
「いやぁ、全く、おっしゃるとおりでございます。三十路から四十路くらいの女は、もうたまりませんね」
「ほう、そうですか、人妻であればなおよし、ですか」
「先生のおっしゃるとおり!」
 沼田は嬉しそうな顔でポンとヒザをたたき、岩井の空になったコップにビールを注ぐ。
「人のものはよく見えるからのう、沼田さん。体がのう」
 モウモウと煙をはく。
「そりゃもう、人妻という語句の響きがたまりませんね。それに体も、こうして、こうきて……」
 両手で女の体をかたどる。
「なるほど。沼田さんくらいですと、その辺りの年齢のおなごが合いますな」
「いやあ、本当にそうだとよいのですが」
 沼田はハエのように手をこすっていた。汗ばんでいるので嫌な音がする。
「田倉さんの場合は、引く手数多でしょう」
「うちの部長さんは、そりゃあモテますよ」
 何度も『さん』付けで呼ぶことにより、軽く見ているふうを装うことは忘れない。
「他人の妻と懇ろになったり……」
「いや、さすがにそこまでは」
 酒で顔を赤くした上機嫌の沼田は田倉の代わりに答える。
「そうでしょう、そうでしょう。人妻はいけませんな。癖になるからのう、沼田さん」
「ごもっともっ」
 沼田は軽快な仕草で額をポンと叩く。岩井は口元だけで笑い、葉巻の煙を吸い込んだまま、漬け物を口の中に放り込んだ。田倉は心臓を鷲づかみにされたような気がして声が出なかった。
「艶のある年増もいいが、しかし、おなごの好みは齢を重ねるとともに変化するものかもしれん。のう沼田さん」
 岩井はヤニで汚れた歯を見せた。
「ええ、年増もいいですが、若い娘もピチピチしていてよいですよねえ。ほんとに女はいいですよね」
 沼田は茹で上がったタコのような顔で迎合する。
「若いと言えば先生、昔は十七、八で嫁にいったというではありませんか。信じられませんよ。今でいえば女子高生ですよ、女子高生。”十五で姐やは嫁に行き”なんて唄もありますしね。十五才ですからね。十五。驚きです」
 酒に酔った沼田は調子に乗ってはしゃいでいる。
「ほう……」
「ええ、女子高生です。響きがたまりませんね。今時の女子高生の体はこう、ボン、ボンとしてまして、それはそれはいい体したのもいますし、アイドル顔負けの可愛い娘もいますから、むふふ……。しかしバージンには何の未練もなく、やりまくっている子もいるそうで、いやはや困ったものです」
「そうですか。沼田さんはいろいろとご存じですなあ。しかしその唄は十五で嫁に行ったわけではないでしょう」
 岩井の言ったことには興味を示さず沼田は「先生は女子高生のような若いのを食したことはおありで?」と聞き返したのである。
「いやいやとんでもない。犯罪はいけませんな」
 そう言って笑う岩井はゆったりとした態度で、ビールを喉に流し込んだが、頬がやや上気したように見えた。沼田は岩井の始めてみせた変化にめざとく反応し、好奇心に満ちた眼差しを田倉に向けた。田倉はそっとため息を吐いた。
「沼田さんはなかなか話し上手ですな」
「年齢と共にその手の嗜好は変わるものでしょうか?」
 沼田はしつこくこだわった。タラコのような唇をめくらせて「ささ」と、媚を売るようにビールを注ぐ。
 ひとつ咳をして「うん、そうですな。そういうこともあるかもしれません」と言った。
「もっとも男として役に立たないのでは話になりません。バイアグラとやらを使ってみますか」
「先生、それがおよろしい。先生なら、まだまだ女を泣かせられますって」
 沼田のこの手の話の食付きは、それはすごい。
「しかしお二方は、まだまだその必要はなさそうだ。羨ましいかぎり」
 田倉は返答に窮する。
「この話はこれで終わりです。ここだけの話としてな、のう田倉さん」
 目を細め沼田を一瞥し、田倉に視線を移した。
「もちろんです」
 沼田が何か言い出す前に意識して真摯な態度で頭を下げた。沼田も慌てて従った。


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