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不貞の代償
【寝とり/寝取られ 官能小説】

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威圧-1

 少子高齢化が進む中、多種多様な世帯にとって住みよいまち、人が地域に根差すまちづくり、教育、福祉、保健、医療など各分野の連携、商業施設、各種サービスの充実、交通網の整備、地球に優しいエコロジーをテーマとして掲げ、多くの企業を巻き込み、将来性のある企業への融資、事業用地等の充実等、理想を具現化するような都市計画プロジェクトと言っても過言ではない、国内では過去最大クラスの、まさに社運をかけたベッドタウン計画が発足したのである。
 見切り発車などと否定的な記事を掲載する新聞社もある。確かに問題は山積みで、中でも厄介なのが緑地保全地区の開発許可の取得であった。これは田倉をリーダーとしたディベロッパーチームが担当することとなった。デリケートな問題なので、トップシークレットとして徹底した。携わる人員は経営陣の数人と、直接交渉に当たる田倉部長と沼田課長、補佐として欠かせない下村秘書のみであった。田倉には一時的に執行役員を委嘱された。
 当初、携わる人間は主な取締役以外では田倉のみということだったが、各種交渉に当たる際サポート人員が必要ということになり、一応、田倉の部下でもある沼田に白羽の矢が立った。
 沼田は部下の信頼は乏しく、田倉もしばしば彼らの不平や不満を耳にしていた。むろん会議でもその事は問題としてあがった。しかし現在に至るまでミスもなく、持ち分の仕事遂行能力もあり、いわゆる営業力は長け、実績もあると結論づけ、田倉の補助にあてることとなった。沼田に対する社内の評判など、上層部にとっては大した問題ではない、ということだ。
 日頃から沼田は田倉の方針や指示に対し、批判めいた言動を影で漏らす。田倉の方針は誰が見ても非の打ち所がないのだが、とにかく田倉自身が気にくわないので、重箱の隅を突かずにはいれらないらしい。回り回ってそれを耳にした田倉が苦笑する場面が多々あった。いずれにしても粛々と事を運ぶしかない、と田倉は腹をくくった。
「緑地保全地域を何とかしない限り、中途半端な部分が多くなる。魅力も半減だ。全力でつぶすしかない」と上層部から申し渡されているが、田倉としては自然溢れる広大な緑地を整地することに否定的だった。会議の中でそのことを訴えるが、一蹴された経緯がある。
「素晴らしい計画であることは理解できましたが、あの保全地区は難しいと思いますね」
 ネゴシエーションの場で市井の代表者は口をそろえて言う。
 利権のにおいをかぎつけた、外郭団体や独立行政法人なども絡み話は複雑化してゆく。たちまち交渉は頓挫した。民間の一社員の手に負える代物ではないのかもしれない。さすがの田倉も頭を抱えた。ほかの方法を考える間、山積みとなっている仕事に没頭した。責任のない沼田からは、その件についての提案すらない。考えることすらしない。
 プロジェクトチームの一員である石橋や佐伯らも仕事に忙殺される日々であった。
「代議士殿に会いに行くしかないかな」
 もちろん答えを求めているのではない。下村沙也加がパソコンのモニターから顔をあげた。
「沼田課長はいかがですか?」
 沙也加の笑いを含んだ声。
「うん、よくやってくれている」
「フロアを歩き回っていろいろとこぼしていました」
「うん、そうだね、それも知っている」
「部長は寛大ですね」
「わたしがかね。うーん、寛大ね……」
 複雑な気分の田倉はチラッと腕時計を見た。
「なんとかアポ取ってくれないかな」
 うだうだ考えても仕方がない。田倉は心を決めた。
「岩井氏ですね。承知しました。会期が始まりますので、早いほうがよいでしょう」
「すまんが、そうしてくれるかい」
「初期の交渉から部長自らの方がよろしいかと」
「そうしよう」
 しばらくして田倉は外出した。沙也加は何も言わないが、憂いを感じているのは分かっていた。
 後日、先方から面会の許可をもらった。田倉はすぐに連絡を取り、具体的な日時などを交渉した。


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