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アイツがあたしにくれた夏
【コメディ 恋愛小説】

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本当の気持ち-3

たぶん、どこかであたしは楽観視していたんだと思う。


あの時駿河はめちゃくちゃ怒っていたけれど、あたしがいつも通り話しかければ、いつも通りに接してくれる、と。


なんだかんだ言ったって、駿河は優しくて、あたしを好きでいてくれると、どこかで信じていた。


だからあの恋人ごっこ以来、初めて顔を合わせた駿河と気まずくても、打開策はあるって思っていた。


でも、駿河はあたしを見ることはない。


――今まで通りってのはできそうにねえや。


あの時言ってた駿河の言葉の重さが、今頃になってようやくのし掛かってきた。


駿河を傷つけた代償は、こんなにも大きかっんだ――。


あたしはエプロンの濡れた辺りを睨み付けるように、黙って俯いていた。








後悔いっぱいの状態で、里穂ちゃんが現れたのは閉店10分前のこと。


その頃にはすでにレジ締めを終えて、締め作業に入っていた店長がキョトンとした顔で里穂ちゃんに話し掛けていた。


「あれ、松本さんどうした?」


「へへ、ちょっと」


アイスティーを頼んでカウンター席についていた里穂ちゃんは、駿河をチラリと見てから舌をペロリと出していた。


そんな小悪魔チックな笑顔を見ると、また胸の内がざわめき立つ。


里穂ちゃんに罪は無いのに、何も知らずにニコニコ笑う様子を見ると自然と奥歯に力が入る。


「あれ? 古川さん顔怖いよ」


店長に言われて、ハッと現実に返るあたし。


いけない、平常心平常心。


「やだなあ、乙女に対して失礼ですよ!」


そう言ってあたしはフロアに出る振りして、里穂ちゃんから逃げ出した。







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