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アイツがあたしにくれた夏
【コメディ 恋愛小説】

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本当の気持ち-13

突然の出来事に、閉店ラストの客と思われる、レンタル店の自動ドアから出てきた若いカップルが一瞬固まって動けなくなっているのが視界に入ってきた。


かくいうあたしも、さっきの硬直した体勢のまま突っ立ってるだけ。


初めて聞いた店長の怒鳴り声に、あたしの頭の中は真っ白になって思考回路がストップしてしまったのだ。


……店長が、キレてる……。


もやしっ子、貧弱、ヘタレ、などなど、バイトのみんなからそんなレッテルを貼られていた店長。


愛すべきいじられキャラの彼は、からかわれても「いじめないでくれよー」なんて情けない顔で困ったように笑うだけ。


だから、店長は決して怒らない(怒れない)菩薩のようなイメージがあった。


ところが目の前のこの男ときたらどうだろう。


弱々しさなんて微塵も感じさせないその視線は、修羅場をくぐり抜けて来たようないっぱしの男のそれ。


小娘のあたしがそんな視線を向けられたら怯むしかない。


そんなビリビリ張り詰めた空気の中であたしはこないだの花火大会の時に、駿河が言った言葉を思い出していた。


――あの店長、客ぶん殴ったことがあるんだぜ。


あの時は、駿河の言葉が到底信じられなかったけど、今ならその言葉を信じられる。


普段温厚な人ほど、キレると怖いということを身に染みて理解したあたしだった。






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