バカは死ななきゃ治らない 〜side芽衣子〜-6
◇
「おはよ」
あたしがうっすら目を開けると、目の前に茂の笑顔があった。
ああ、あのまま寝ちゃったんだ。
テーブルの上で突っ伏して寝ていたはずなのに、いつの間にかベッドにいるから、茂が運んでくれたのかな。
「……おはよ」
なんとなくテンションが下がり気味で低い声で挨拶を返す。
しかし、そんなあたしに気付かない茂は、
「昨夜、すげーよかった。
やっぱり俺には芽衣子だけだ」
なんて歯を見せ、含み笑いをしながら煙草に火を点け始めた。
このセリフも白々しいけど、どこかで嬉しいと思ってしまうあたしは、つくづくバカだ。
「よくいうよ、あたしあれだけ嫌がってたのに無理矢理……」
「でもお前、途中からめちゃくちゃノリノリだったじゃん。
あんだけ乱れて、嫌がってたとは言わせねえぞ」
グッと言葉に詰まり顔が熱くなる。
自覚はあったからだ。
……ホント、成長しないのはあたしも一緒。
下唇を噛んで俯いているあたしをよそに、
「あー、煙草がなくなった。
ちょっとコンビニ行ってくるけど、お前も行く?」
と、呑気に彼は訊ねてくる。
「行かない」
「えー、一緒に行こうぜ。
ついでに朝飯買ってこよ」
「めんどくさい」
壁際を向いて、毛布をかぶろうとすると、茂の手があたしの腕を掴む。
「芽衣子、おいで」
屈託のない笑顔をこちらに向けると、半ばベッドから引きずり出すようにして、あたしの身体を腕の中に収めてきた。