投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

異種間交際フィロソフィア
【ファンタジー 官能小説】

異種間交際フィロソフィアの最初へ 異種間交際フィロソフィア 44 異種間交際フィロソフィア 46 異種間交際フィロソフィアの最後へ

食用魔獣の大暴走-4

「退魔士が来たぞ!」

 ドラゴンの唸り声に交じり、遠くで誰かが叫ぶ声が聞えた。

「っ!?」

 唐突に、狼がエメリナを頭で突く。
 無理やり背へ押し上げられ、とっさに血塗れの毛皮へしがみついた。
 すぐ傍に、もつれ合ったドラゴンの足が踏み下ろされ、盛大に泥を跳ね飛ばす。
 再び暴れだしたドラゴンへ人々が視線を向ける中、狼は矢のように駆け抜けだす。

「うわっ!わっ!待っ……!!」

 エメリナは両腕で必死にしがみつき、振り落とされないようにするのが精一杯だ。
 どこをどう駆け抜けたのかも、よく覚えていない。
 唐突に狼が止まり、身体を激しく降る。
 柔らかな草地に、エメリナは投げ下ろされた。

「痛っ!」

 頭を振って辺りを見渡すと、そこはベンチと遊具が少しあるだけの、小さな寂れた公園だった。
 どこかで見たと場所だと思ったら、ギルベルトの家の近所だ。
 ベンチに座っていたおばあさんが、ポカンとした顔でエメリナをみつめている。

「あらまぁ、お嬢さん!大怪我して!!」

 親切そうなおばあさんは、杖を突きながら危なっかしい足取りで駆け寄ってくる。

「え、ええと……これは私じゃなくて……それに、あの、わたしも、何がなんだか……」

 傍らの水溜りを覗くと、頭からかぶったドラゴンの血と泥で、お化けのような姿だった。

「大きな犬が飛び出して来たと思ったら……貴女を置いてどこかに言っちゃったみたいだけど」

 ハンカチを差し出し、おばあさんはキョロキョロと辺りを見渡した。

「なんだか騒ぎが起きているみたいだし……あの犬は貴女の?」

 尋ねられ、言葉に詰まる。

「……わかりません」

 そうだとは言えないし、違うとも言いたくなかった。
 頭は興奮しきってグチャグチャで、涙が零れそうになる。
 まだ痛む足腰を奮い起こし、立ち上がった。

「お嬢さん!大丈夫なの!?」

 手を貸そうとしてくれたおばあさんを断り、裸足で駆け出す。
 辺りの道は無人だった。みんな、ドラゴン騒ぎを聞きつけて見に行ってしまったのだろう。
 お陰でどろどろの姿を見られず、エメリナはなんとかギルベルトの家までたどりつけた。

 ポーチに足をかけた所で、ポツポツと水滴が空から落ちてきた。
 大粒の水はすぐ多数の仲間をひきつれ、土砂降りの雨になる。

 扉は開かない。朝出かけた時のまま、鍵が閉まっていた。
 合鍵は渡されていたが、バッグごとあの場に落としてきてしまったのに気づく。

 夢中で家の横をすり抜け、裏庭に駆ける。
 書斎の扉は開きっぱなしで、間口には泥汚れが付いていた。
 書斎も泥だらけで、廊下に続く扉にも、べっとり泥が付着していた。
 必死で駆け込み、泥の後を追って居間に飛び込む。

「先生!!」

 思ったとおり、ドラゴンの血と泥にまみれたギルベルトが、荒い息をついて居間に座り込んでいた。



異種間交際フィロソフィアの最初へ 異種間交際フィロソフィア 44 異種間交際フィロソフィア 46 異種間交際フィロソフィアの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前