手放してしまったもの-3
「仕方ねえだろ。ちゃんとケジメつけるとこはつけねえと」
「ふぅん」
「なんだ、幻滅したのかよ」
「いや……、ちゃんと避妊してくれてありがたい気持ち半面、これが現実なのかっていう気持ち半面って感じ」
そう言って舌をチョロリと出して、肩を竦めて見せる。
幻滅はしてない。確かにセックスの最中は気持ちが高揚して、普段の自分とは違う自分が出てきてあんなに乱れてしまった。
ただ、ふと現実に戻ってこうして素面に戻ってアレを冷静に振り返ってみれば、なんだか気恥ずかしく思えただけなのかもしれない。
幻滅じゃなくて、クールダウン、そんな言葉がピッタリだ。
「じゃあ、逆に聞くけど、翔平はあたしに幻滅したりしなかったの?」
「何が?」
「え、えっとね、あたしの身体見て引かなかったのかなって……。あたしは痩せてないし、スタイルよくないし、そ、それに……毛深い方だし……」
自分のコンプレックスを口に出すのは、すごく勇気がいる。
次第に目を泳がせ、語尾が弱まっていくあたしに、彼はなぜかプッと噴き出した。
「お前、そんなの気にしてたの?」
「だって……」
「俺、全然気にしてなかったよ?」
「ほ、ほんと?」
「マジ。俺としては、やっとお前を抱けたー! って気持ちだけだったもん」
そう言って頭を撫でてくれる彼は、目を弓のように曲げて、とても優しい顔をしていた。
たまらなくいとおしさが込み上げて、あたしはなんだか照れ笑いになる。
しばし、そうやって抱き合いながら小鳥のようにキスを交わしていると、彼は不意に真面目な顔になってあたしを見下ろした。
すると、なぜだか心臓がドクンと大きくなったような気がする。
それは期待なのか恐れなのか、今のあたしにはわからなかった。