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アイツがあたしにくれた夏
【コメディ 恋愛小説】

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手放してしまったもの-2

すると奴は、含み笑いでこちらを振り返ると、


「さっき花火買った時に一緒に買ってたんですけど」


と白い歯をチラリと覗かせた。


射し込む朝日に、翔平の頬の産毛がキラリと光る。


そんなあどけなく笑う彼に、あたしはついつい大声を出した。


「あんた、最初からあたしとエッチするつもりだったの!?」


「いや、最初からっつーか、いかなる場合に転んでもいいように……」


「だから、花火買うときにあたしにお金払わせなかったの?」


「そそそ。割り勘にしたらバレるじゃん」


用意周到な翔平に、すっかり開いた口が塞がらないあたしは、なんとなくセックスの裏事情を知ってしまったような気がした。


激しく求めてきた翔平の熱いまなざしが、途端になんか作り物みたいに思えてきたあたしは、


「なーんか、エッチってロマンチックなだけじゃないのね」


と、苦笑いになって、またベッドにボスッと倒れ込んだ。




すると、後始末を終えて床に落ちていたボクサーパンツを拾って穿いた翔平が、再びガバッとあたしに覆い被さり、ギュウッと抱き締めて来る。


翔平の胸板に押し潰される乳房の感触、すね毛が脚に触れるくすぐったさ。


コイツにもすね毛とか陰毛とか、そういうの生えてるんだって、少し前のあたしなら想像もしなかっただろう。


いや、常識的に考えれば翔平は大人なんだし、生えるもんは生えてて当然なんだけど、今までのあたしなら、好きな人のそういう部分って想像したくないような気持ちでいた。


でも、今は肌に掠める少し固いすね毛の感触すらやたら心地よい。


好きになったら全てが愛おしく感じるんだろうか。


駿河の少し汗ばんだ身体の匂いすら、いつまでもフガフガ嗅いでいたくて、あたしもクスクス笑いながらギュウッと翔平の身体を抱き締め返した。


あー、いつまでもこうしていたい。


なんて、彼の身体に頬ずりしていると、チョンと鼻をつままれた。





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