手放してしまったもの-1
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気付けば繋がっていた性器は離れ、翔平はベッドの縁にすわって自らが放った精の後始末をしていた。
カーテンの隙間から朝日が線となって射し込み、彼の背中に陰陽を作っている。
丸まった背中が何だか可愛くて思わず破顔してしまう。
セックスの真っ只中は、翔平のリードに委ねるしかできなかったのに、終わってしまうといとおしさで抱き締めたくなるのは母性本能ってやつなのか。
身体を起こし、後ろからその汗ばんだ背中をそっと抱き締めると、彼は
「うわっ」
と、素っ頓狂な声を上げた。
慌てる翔平の手元を見れば、さっきまでつけていたコンドームを外し、ティッシュでアレを綺麗に拭っている所。
「見んなよ、こんなとこ」
そう言って下唇を突き出す彼がなんだかおかしくて、クスクス笑い出してしまった。
「……なんかさ、ゴムってつけるときも外すときも間抜けだよな」
「そういうもんなの? あたし、翔平がゴムつけてたの全然気付かなかったよ」
実際その通りで、あたしが彼の愛撫で何度も意識が飛びそうになっていたあの状況で、彼がいつコンドームをつけていたのか、全く気付かなかったのだ。
「……ってか、いつもゴムを常備してるわけ?」
ふと疑問が沸き上がる。
ちゃんと避妊をしてくれたのはありがたいけど、コンドームを持っているってことは、他にもこういうことする相手がいるから、と考えるのが自然だ。
となると、嫉妬してしまうのは無理もないこと。
あたしはジト目で翔平を睨みながら、答えを待った。