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異種間交際フィロソフィア
【ファンタジー 官能小説】

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週末デートの締めくくり-5

 ***

 ――女子二人が盛り上がっている頃、ギルベルトは書斎の大きな窓から夜空を見上げていた。

 都会の電気で濁った空に、殆ど欠けた月が僅かに浮かんでいる。
 小さな溜め息をつき、古い本を取り上げた。先祖が書き記したこの本は、もうすっかり暗記してしまった。
 それでも時おり、手にとって眺めてしまう。
 かすれたインク文字に滲みこんでいる、先祖の息吹を感じ取ろうとするように、繰り返し読まずにいられない。

(まいったな……)

 自分自身へ、舌打ちしたくなる。
 エメリナは非常に頭が良い。
 そんな彼女が今までギルベルトの秘密に気づかなかったのは、あくまでも上司と部下の関係だったからだろう。
 だから、こんな関係になるべきではなかったのだ。

(まるで、獣の所業だ)

 理性でわかっていながら、好物を目の前にした獣のように、本能に逆らえなかった。
『変身』のあとは興奮が収まらず、理性が崩れかけるのを自覚していた。
 でも、今までで一度たりとも、そういう時に誰かを抱いたことなどなかった。
 恋もしたし、抱いた女性もいたけれど、本能がむき出しになる満月の時は、傷つけてしまいそうで触れたくなかった。

 それなのに、エメリナだけはどうしても我慢ができなかった。
 駄目だと内心で叫びながら、ごく普通の人間を装い、素知らぬ顔で恋心を伝えた。
 彼女を騙したも同然だ。

(もし知ったら、エメリナくんはどう思うかな……)

 机に放ったままの携帯電話が目に入り、もう一度深い溜め息をついた。
 ギルベルトの秘密を知っている相手は、家族やバーグレイ・カンパニーの関係者に、何人かいる。

 自己憐憫に浸る気などない。とても周囲に恵まれ、愛されたと思う。
 だからこそ、電気が使えない体質でも、存在するだけで罪とされる身体でも、いじけることなく育って来れた。

 だが、彼らは先祖代々から秘密を共有する者たちで、ギルベルトが自分から誰かに秘密を話したことは、一度も無い。


 エメリナの優しく思いやりのある性格を知っている。愛しているし、誠実な子だと信じている。
 けれど……どんなものにも限界というものはあるのだ。




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