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異種間交際フィロソフィア
【ファンタジー 官能小説】

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満身創痍の初デート -8


 ***

 本選開幕の挨拶が始まると、会場中の視線がステージに集中した。黒豹メイドのコスプレをした司会者が、甲高いアニメ声で観客を盛り上げていく。
 出場者たちはステージ上で簡単なインタビューを受け、一人づつ挨拶をした。

 壇上から見下ろすと、改めて熱気と人数の多さに圧倒されたが、緊張しつつエメリナも挨拶を無事に終えた。
 ステージからずっと離れていたけれど、ギルベルトの姿を、ちゃんと見つけられたからだ。

 しかし耳の奥には、イヴァンが最後に吐き捨てた言葉が、まだワンワンとうるさく反響している。
 かき消したくて、心の中で気楽に呟いた。

(なーんだ。ただの妬みと逆恨みだったんじゃない)

 司会者に促され、ステージ上の対戦台に座る。向かいの席にはイヴァンが座った。
 ゲーム機には色つきプラスチックの屋根がつき、強い陽射しが画面に反射するのを防いでいる。
 けれど、ジリジリと背中や頭を照り付けられるからだろうか?
 やけに喉が渇き、動悸が激しい。下腹から不安がせりあがってくる。

『ただいまより、第一回戦を開始いたしまぁす!』

 司会の宣言と共に、スクリーンの画面と音楽が切り替わる。
 エメリナはいつもと同じキツネ少年を、イヴァンはライオンの王を選択した。
 巨大な樹木の城を背景にしたステージで、獣人たちが戦いだす。

(あははっ、こんなヤツのいう事なんか、無視無視!)

 必死で言い聞かせる。
 頭でわかっているはずなのに……指がこわばってボタンの表面を滑る。スティックの動きがずれる。攻撃はいつもの半分も当たらない。

(ギル先生は、あんなのとは違うもん!)

 ボタンを押し間違えた。上段蹴りが空振りし、足を掴まれたキツネ少年が空中高く放り投げられる。
 巨大スクリーンに映る映像に、大きなざわめきが上がった。

(先生は……先生は……)

 チラリと視線を横にそらし、ギルベルトの姿を探してしまう。どんな顔をして自分を見ているか、気になってしかたない。

「っ!!」

 余所見をした隙にガードが遅れ、巨体のタックルをまともに喰らった。
 キツネ少年の体力ゲージがゼロになり、獅子王が勝利の雄たけびをあげた。観客たちから興奮の歓声があがる。

(大丈夫……まだ挽回できる!)

 本戦は予選と違い、ニポイント先取した者の勝ちだ。これから集中して二回勝てば良い。
 二ラウンド目がすぐ始まり、エメリナは両手をぎこちなく動かす。
 ドクドクと心臓が脈打ち、空気がうまく吸えない。冷や汗が背筋を伝い、手が震える。

 ギルベルトは他の分野なら、何でもエメリナより上手く出来る。
 なのに、唯一扱えない電気製品を、目の前で軽々と操っている自分を、彼はどんな気持ちで見ていたのだろ?
 ひょっとしたら、気づかないうちに傲慢な態度をとっていたかもしれない。

 人は自分が出来る事について、ついつい高飛車になりがちだ。
 それで不愉快な思いをした相手にとってみれば、向こうに悪気があったかどうかなんて、関係ない。

(いい気になってなんか……わたし……そんなつもりじゃ……)

 イヴァンに恨まれていたなんて、まるで気づかなかった。
 コンテストの優勝が決まった時、本当に喜んでくれているのだと、バカみたいに信じきっていた。
 確かにあれは逆恨みだと思う。こっちだって正々堂々と努力した結果だ。
 でも……イヴァンや他の皆も、優勝を目指して一生懸命頑張ったのを知っていたはずなのに……。

 ―――自分の優勝ばかり見て有頂天になっていたのは、どこの誰だ?

(もしかして、私……ギルベルト先生にも、無神経だったの……?)

 強張った両手が、完全に動くのを拒否した。
 画面の中でキツネ少年が、されるがまま攻撃の嵐を受ける。

 もう殆ど残っていなかった体力ゲージがゼロになった。

 司会が駆け寄り、何か言ってきたが、耳を素通りしてよく理解できなかった。
 曖昧な返答をし、観客席にお辞儀してステージを降りた。




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