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アネクメネ・オアシス
【ファンタジー 官能小説】

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オモワク-9


「あ、おい……出発は……」

 2人を呼び止めようとするテオの肩に、パルとノアの手がポンと置かれた。

「無駄です。植物の事を考えているランス様は何も聞きません」

「リュディも同じだよぉ〜やっと自分が作った植物調べられるんだもん……暫くは動かないよ……」

 植物学者ランスと薬剤師リュディ……植物に関しては2人共異常な程熱心だ。
 白熱した討論が繰り広げられるであろうと予想できたパルとノアは、お互いに溜め息をついて力無く首を横に振るのだった。


 リュディとランスの討論は夜まで続いた。
 残された3人はクラスタまでの道のりを地図で確認したり、羽馬の様子を見たり……いつでも旅に出られるように準備をする。
 そして、夕食の準備をしている時にリュディとランスが揃ってテントから出てきた。

「どうでしたか?」

 ノアがランスに問いかけると、ランスは複雑な表情でリュディと顔を見合わせる。

「うん……ちょっと問題が……ねえ?」

「ええ……まあ……」

 2人は微妙に言い淀み、吸血蔦を調べた結果を報告した。

 リュディの吸血蔦はオリジナルの吸血蔦をベースに、肉食系植物のザルスの遺伝子を組み込んだもの。
 よって、自分で動いて獲物を探すしサイズも大きいのだ。

「ただ、吸血蔦としての特性も合わせ持っていてね……繁殖力が強いんだ」

 吸血蔦は基本、死体などに寄生して育つ。
 しかし、そんな条件は中々無いので、綿毛を使って種を沢山飛ばすのだ。
 そして、種の状態でチャンスを待つ……種の状態だと乾燥や寒さに強い作りになっている。
 一方、ザルスは球根を株分けしていくタイプで、ひとつの固体からはせいぜい5株。
 しかし、吸血蔦は沢山の花を咲かせて沢山の実をつける。
 そして、その実から何十個もの種を飛ばすのだ。

「え?それって……」

 話を聞いていたテオの顔がサアッと青ざめる。

「吸血蔦ひとつの固体から何百もの種が飛ばされ、それに寄生されると株分けして更に増えて何百もの種が飛ばされ……あっという間に世界は吸血蔦に埋め尽くされるねえ」

 ランスはあっはっはと笑い、その横でリュディは小さく縮こまる。
 ランスは呑気に笑っているが、正直言って笑えない。



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