オモワク-8
「私は植物学者なんだ」
「えっと……植物のお勉強してるの?」
「まあ、そうだね」
今、ファンでは死火山になった火山のマグマがゆっくりと冷えている状態。
なので今まで地熱を利用して育てていた作物が育たなくなってきているのだ。
「ファン特有の植物も多いからね、私はそれを守りたい」
だから大陸各地に出かけて行ってその土地の植物を調べているのだ。
「王子様みずから?」
「当たり前じゃないか。自分の国は自分で守らなきゃ」
そう言うランスの目は使命感に燃えてキラキラしている。
「ふうん……アタシ、アンタ気に入った♪」
パルはにこぉっとランスに微笑み、翼と尻尾をパタパタさせた。
「ありがとう。私も君が好きになったよ」
リュディの事を第一に考え、守ろうとする姿勢にとても好感が持てる、とランスはパルの頭をよしよしと撫でる。
「えへ」
パルはくすぐったそうに肩をすくめ、翼と尻尾を仕舞った。
それから暫くしてリュディが目を覚ました。
「申し訳ありません」
リュディはパルに事情を聞くと、ランスに向かって深々と頭を下げて謝る。
いくらベタベタ触られたからといって、王族に向かって攻撃をしかけるとは……。
そんな彼女にランスは困ったように微笑んだ。
「謝るのは私の方です」
「?」
「貴女を……というか、貴女の中に居る植物をもっとちゃんと見たくてわざとああいう事を……申し訳ありません」
植物学者としてリュディの作った吸血蔦はとても興味深かった。
だから、どの状態で株分けが始まるのか……株分けはどの位出来るのか……株分けされた子株の生態は……などと色々調べたかったのだ。
「いえ……いえ、良く分かります……私も……知りたかった」
リュディも自分が作り出した植物の生態、成分を詳しく調べたかったのだが、株分け中もその後も意識が無いので出来なかった。
「私を許して頂けるのですか?」
ランスの言葉にリュディはそっと頷き、悪戯っぽく笑う。
「……そのサンプルを……私にも見せて頂けるのでしたら……ですけど」
リュディの答えにランスはパアッと顔を輝かした。
「勿論っ!勿論ですとも」
では早速、とランスは自分達のテントにリュディを案内する。
リュディも足取り軽くランスについて行った。