オモワク-6
「使わせて頂いたのは透視魔法です。それでリュディさんが体内に植物を飼ってらっしゃる事も、両性具有でいらっしゃる事も把握できております。申し訳ありません」
ノアは深々と頭を下げて丁寧に謝る。
「謝って許される事じゃなっ……ふにぃ〜」
ガバッと顔を上げたパルだったが、翼の付け根まで愛撫されて再びへなへなになった。
「失礼とは存じつつもやらなければならない理由があるのです。僕にはランス様をお守りする使命がありますから」
黙っていたリュディがそっとランスに目を向けた。
その目はいったい何者なんだ、と問いかけている。
ランスはスクッと立ち上がり、慣れた様子でリュディに向かって正騎士の礼を送った。
「改めて名乗ります。私はランスロット=オーウェン=ファン……島国ファンの第1王子です」
「おっ?!」
「!!」
ランスの正体にパルは尻尾を直立させ、リュディに至っては声すら出ない。
「リュディヴィーヌ嬢……貴女の美しさに目が眩んだ私をお許し下さい」
「は?」
しゅぱーんとリュディの前に膝まづいたランスは、驚愕で固まっている彼女の手をそっと握る。
「私が貴女の美貌に騙されるのではないかと心配したノアが犯した暴挙……主である私の責任です」
撫で撫で、擦り擦り……ビキッ。
昨日見たのと全く同じ風景を、今度はテオは止めなかった。
呆れた顔でパルの愛撫を続けている。
「ちょっ……テオぉ〜リュディから蔦出ちゃってるよぉ〜」
翼の付け根と尻尾の根元を結ぶ背骨をツツツと指でなぞられたパルは、完全に脱力しつつもテオに注意を促した。
「大丈夫大丈夫。見とけ」
落ち着いた様子のテオだったがパルが落ち着かない。
本当に良いのだろうか、とノアに目を向けたが、ノアは盛大に溜め息をついて首を横に振るだけだった。
ずるる
リュディの口から蔦が伸び出て獲物を探すようにゆらゆら揺れる。
人間の吐く空気に敏感な植物は、間近に居たランスに狙いを定めた。
しゅるる
リュディの中の親株から株分けした子株がぼとりとランスの手の上に落ちる。
しかし、皮膚に食い込み体内に潜る筈の蔦はランスの肌の上でのろのろ蠢くだけだった。