オモワク-4
テオが面白半分でリュディ達の秘密を話せと言っているワケではない事ぐらい分かる。
ただ、あの時の事を思い出すと震えが止まらない。
むせかえる男の臭い、血の臭い……燃え盛る炎、その中で鮮やかに輝く緑色の蔦に頭に響く呻き声。
カタカタと震える手、じっとりと身体を湿らす汗。
(でも……)
リュディは震える手をギュッと握りしめた。
今まではパルが守ってくれていた……そして今もリュディが傷つかないように、とテオに噛みついている。
いつまでも甘えているワケにはいかない。
どんなに時間がたとうが傷は癒えないのだから。
だったら前を向いて立ち向かうしかない。
握りしめたリュディの手の震えが、決意と共に止まっていった。
ノアはノアで内心舌打ちしていた。
まさかテオがここで秘密を話せと言い出すとは思っていなかった。
旅の途中でバレる事はあるかも知れない。
それはそれで構わないのだが、それでリュディがヒカなければ良いのだが……ノアはチラリと主を見上げ、その表情に脱力した。
(何をニヤニヤしてらっしゃるのですか)
ランスの顔は楽しそうに満面の笑みだったのだ。
(ん?私は構わないよ?リディヴィーヌ嬢には私の全てを知っていてもらいたいしね♪)
(はあ……そうですか……)
もしそれでリュディがヒイても全然オッケー。
アタックあるのみだ。
(……本気なんですね?)
お遊びならそこまでする必要はない……秘密を明かして、全てをさらけ出して口説きにかかる……この主は本気だ。
よりによって植物を体内に飼っているような、両性具有の人間に本気なのだ。
(当たり前じゃないか♪君は分かっているかと思っていたよ、ノア)
(はあ……分かってましたけどね……)
認めたくはなかった……これで我が主は変態確定だ。
ノアは深々と溜め息をつき、テオの方に顔を向けた。
「失礼ながら」
ノアのあげた声に全員がそちらに注目する。
離れた場所に居たテオとパルも言い合いを止め、皆の所へと戻った。
「……失礼ながら、初めてお会いした時点でパルさんが魔物なのは承知しております」
「へ?」
パルは自分を指差して目をパチパチ瞬く。