オモワク-3
「後はパルさんですが……テオドアさんの話を聞いているので、まあ大丈夫でしょう」
全てノアの計算通りに事は進んでいる。
「流石だよ、ノア。君は最高の策士だ♪」
ランスはノアに抱きついて頬を擦り擦り。
「恐れ入ります」
主が望む事を叶えるのが従者の役目。
これぐらいは正に朝飯前。
「さあ♪楽しくなってきたなぁ♪」
ランスはどうやってリュディを口説こうか思案しつつ、荷物をまとめ始めるのだった。
「起きてっ起きて、テオ」
「ん゛あ゛?」
ゆっさゆっさ身体を揺すられ、テオは重い瞼を開ける。
「……んだよ、出発は夕方だろ?」
ぼんやりした視界に映ったリュディに目を細めてテオは文句を言った。
「クラスタに行く」
「…………は?」
「ベランナが群生してる……見たい……」
簡単に理由を述べたリュディは、早く起きてとテオの手を引っ張った。
「あ゛〜…もっと詳しく……ベランナって何?」
「とても稀少価値の高い魔草」
「それがクラスタに群生してるんだってさ」
パルはリュディに変わってテオに説明してやる。
魔草の事で頭がいっぱいなリュディには、まともな説明は期待出来ないのだ。
「はあ……成る程……」
テオは以前、リュディとサンドワームの残骸を取り合った事を思い出す。
薬剤師リュディは薬剤に対してとても執念深い……多分、テオが反対しても1人で勝手に行くだろう。
「分かった」
別に反対する理由も無い……ただ、ランス達の事、リュディ達の事、両方の秘密を1人で抱えるのは荷が重すぎるなぁ、とテオは考えるのだった。
「……そんなワケで、お互い秘密抜きの自己紹介をしてくれ」
テオはメンバーを集めて言い放つ。
集められた面々は物凄く戸惑いながらテオを眺めた。
「一緒に旅をするなら隠し事無しで頼む」
「ちょっとテオ!」
これにはパルが怒ってテオを引きずって離れた場所へ行く。
(アタシは良いよ?!でもリュディには酷過ぎだよっ!)
(お前らの秘密はオレ1人で抱えるにはデカ過ぎんだよっ)
(だからってリュディの傷抉るような真似許せないっ!)
離れた場所でコソコソ言い合いをする2人をよそに、リュディは膝に置いた手をじっと見ていた。