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果葬 ―かそう―
【その他 官能小説】

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―13―-5

 神経質な生き物だという印象だ。
 医師と患者の微妙な距離感というより、男のほうはいちいち彼女の顔をのぞき込んでは、馴れ馴れしく体を触っている。

 北条は、この男は一体誰なのだろうかと、これまでに度々登場していた目出し帽の人物と重ね合わせてみた。
 はっきりしたことは言えないが、両者には似ている部分があるように思える。

 ふと、誰かの息を呑む音が聞こえた。
 カメラの向こうの月島才子が内診台に乗ったからだ。

 自ら脚を開き、腹部を上下させて浅い息をしている。
 期待、不安、その両方が入り混じった表情を浮かべて、一線を越える瞬間を待ち焦がれているようだ。

 男はハサミを手に構えて、じりじりと彼女の下着に沿わせていく。
 虫も殺さないような顔の医師は、銀色の刃先でショーツを挟み、サディスティックに切れ目を入れた。

 あられもなく下着がはらりと剥がれ落ちる。
 さらされた女性器は美しく貝割れしており、女らしい色素を分泌させて潤って見えた。

 黒ずんだ外側の皮膚をめくり、充血した内側の皮膚を分けると、男はそこに顔をうずめて、ぺろりと舐め上げた。

 男の舌を生身に受けて、月島才子の腰が素直な反応を見せて曲がる。

 夫婦や恋人同士がする無難なプレイではなく、そこに変態要素が加わることで生まれた未体験の官能に、体中を熱くさせているのかもしれない。

 彼女の上半身は未だに清楚なままでいる。しかし下半身はまったくの別人だった。

 二人のあいだにはずっと前から信頼関係があったみたいに、彼女は医師にすべてを委ねて、舌と、指と、男根とを自分の蜜壺に導いた。

 よがり狂う若い娘と、冷徹な眼差しで淫らな行為をくり返す男。
 一刻のうちに月島才子の容態は変化し、弓形(ゆみなり)に仰け反らせた背中を右に左によじって、救いを求めるように何度も手指を結んで開いた。

 それを知って、白衣の男もたたみかける。
 繋がったまま内診台を揺する二人。

 院内セックスというありえないシチュエーションも手伝ってか、互いの肉体を融合させようとさらに密着し、快感の果てに向かって上り詰めた。

 月島才子の動きが止まる。

 男は腰の振り幅を加減しながら、ゆったりと射精を楽しみ、そして支配者の表情で性器を抜いた。

 卵子が受精してしまう可能性をも恐れない、まったく最低な光景だった。
 こんな人間を医師として認め、なんら疑うことなく世に送り出してしまった国の甘さに、刑事らも尻の穴が引き締まる思いがした。

 沢田透は、この男が花井孝生を刺したとでも言いたかったのだろうか──。

 ようやく事件の根源が見通せそうになった時、そこで映像は終わった。
 後味の悪さだけが残る、なんとも骨の折れる作業だった。

「いちばん最後に映っていた白衣の男。彼に前科がないか、俺がデータベースで調べておきます」

 五十嵐が険しい顔で言った。

「そうしてくれ」

 北条は脳内に熱をおぼえて、新たな回路がつながる錯覚に、一連の事件の終末を思った。


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