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果葬 ―かそう―
【その他 官能小説】

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 数日後、月島才子の行方を探っていたはずの沢田透が、港近くの倉庫の中から変わり果てた姿で発見された。
 沢田の居場所を示すGPS信号がそこで途絶えたので、不審に思った警察官らが駆けつけたのだ。

 死因は毒物によるものと断定されたが、直前の沢田の行動から推測すると、自殺の可能性は低いのではないかと警察は判断した。

 組織の内部情報を他言した沢田のことを、その事実に気づいた何者かが毒殺した。
 そう考えるのが自然だと誰もが口をそろえたが、他殺を仄めかす痕跡を見つけることはできなかった。

 死の間際、沢田は無念でならなかっただろう。
 花井香澄という女性に溺れたが故に招いた悲劇だとしても、真犯人が誰であるかを見届けたかったに違いないのだ。

 警察署に郵便物が届いたのは、それから間もない二日後のことだった。差出人は沢田透である。
 中身を確認したところ、怪しげなDVDが一枚入っていただけで、手紙が添えられているようなこともなかった。

 デッキにDVDを挿入し、関係者らによる確認作業がはじまった。

 再生画面に映し出されたのは、タイトルのないアダルトソフトの映像のようだった。
 全裸姿の若い男女によるはげしい営みが、無修正のままこちらの目に飛び込んでくる。

 どうやらただの男優と女優みたいだな──。

 音声にわざとらしさがある──。

 そんなふうに皆それぞれの感想を抱いたまま、男が女に挿入する映像だけが延々とつづく。

 女は何度もオーガズムを訴えるが、なかなか絶頂する気配が訪れないでいる。
 対する男はただ力任せに腰を振るだけで、相手を満足させようという気配りも感じられない。

 沢田透が自らの命と引き換えに寄越した物、果たしてこの映像にそれだけの価値があるのだろうか。
 そんな白けた空気が漂いはじめた時だった。

 突然、映像が乱れ、音声がぷつぷつと途切れると、さっきまでとはまったく別な映像と入れ替わってしまった。

 生活感のないワンルームの中央に、髪の長い女性が一人きり、しきりに室内を警戒しながら座っている。

 残念ながら音声はないものの、鮮明な画質のおかげで彼女の身元はすぐ明らかになった。
 先日、早乙女町の公園で全裸で発見された、専業主婦の青峰由香里に間違いなかった。

 大上次郎と沢田透によって雀荘から拉致されたあと、彼女を金で買った客がここへ監禁し、何らかの理由で監視カメラに映像をおさめた──誰もがそう思った。

 画面の奥にドアが見える。そこが開いて、一人の男が入ってきた。
 目出し帽をかぶっているせいで人相がわからない。

 男に気づいた青峰由香里は座ったまま後ずさりして、二人の距離が縮まると、男が薬瓶ほどの小さな容器を取り出してきた。

 会話によって取り引きがなされているようで、彼女は恐々と首を振る。
 そんな態度が気に入らない男は、体を揺らして苛々しはじめ、出し渋るようにスタンガンを手にした。

 本気で使うつもりはないようだが、彼女の表情には恐怖が浮かんでいて、今にも泣き出しそうにしている。


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