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サディスティック・スパイラル
【SM 官能小説】

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スパイラル-12



“今夜7時に、この住所を訪ねてこい”
竹中からの指令のメールが届いたのは夕方だ。残務整理で残業を予定していたが変更して竹中に従うしかなさそうだ。竹中の存在は小宮山とは比べものにならない絶対的な力があった。
今回ばかりは逃げられそうもなかった。だが竹中に君臨された冴子はどうしても、その立場に馴染めずにいる。身体に押し付けられたMの焼き印はとれずとも誇り高いS嬢のプライドが捨てきれずにいた。
その住所は繁華街から延びる長い私鉄沿線の川を越えたマンションの一室だった。都心であったならそれなりの家賃を払わねばならない造りだが、川向うの地域なら左程の賃料にはならないだろう。竹中が暮らしているには不釣り合いな牧歌的な土地柄だ。指定された部屋番号を訪ねると「相原」の表札がかっかっていた。
“理緒の部屋……”
呼び鈴を押したが中からの反応がないままだ。もう一度押すとすぐに厚い扉の向こうから竹中の声がした。よく聞こえなかったが竹中がいることは確かなようだ。
ノブを回して施錠されていない玄関ドアをスゥッとうすく開けた。玄関先に突っ立っている竹中の大きな背中が見える。だがその足もとに膝立ちした女性らしき膝頭が見え冴子はぎょっとした。
んぷんぷぅっ、んぷぷっ……
恐る恐るドアを開けて玄関口に入ると竹中の股間に頭を埋めている理緒の姿が見えた。何者かがドアから入ってきていることに気づいているはずなのに熱心に口腔奉仕に励んでいるのは竹中に冴子が来ることを聞かされているにちがいない。
憑かれたように、その淫靡な行為に没頭する姿はとても、おぼこい理緒からは想像もできないことだった。会社を休んでいる間に竹中に相当仕込まれたのだろう。竹中も何も言葉を発することもなく理緒の頭から頬を愛おしそうになでまわしている。
二人の示し合わせた無言が冴子に重くのしかかってくる。冴子一人が蚊帳の外におかれているのは明白だった。この場に呼ばれたからには竹中の何らかの企みに引きずり込まれてしまうのだろう。
「もうすぐ終わる。そこで待っていろ」
冴子の心の中を見透かしたように竹中が静寂をやぶった。
んぷんぷ、ぬぷっぬっぷ!
粘着質な音がだんだんと大きくなってきた。理緒の振りたてる頭が激しさを増し、竹中が腰を突き出して頭に指を立てて掴んだ。一瞬腰を震わせると、それっきり理緒の動きが止まり口を窄めて盛んに吸引しているようだ。口を結んだまま目を瞑り、そのまま上を向いて咀嚼するとまだ余力をのこしたペニスをしゃぶり清めだした。その一連の動きを見るだけで調教が身に沁みついていることが窺いしれると、同時にわが身に振り向けられる二人の策略に心が冷えていった。

冴子が竹中に裸に剥かれソファの椅子に縛りつけられる間も理緒は無言だった。冴子の顔は見ようともせず視線を床におとしている。
冴子は足首と腿を縄で縛られ、肘掛に足を広げた格好で固定された。手首は頭の後ろで組まされて首に固定されてしまった。
「さあ理緒、悪い冴子に仕返しをするんだ。冴子を啼かせる道具をパパが買ってきてやったからな」
竹中は大ぶりのディルドを取り出して動けない冴子の顔に突き出した。ディルドのスイッチを入れるとエラの張った亀頭部をくねらせ胴体部に埋め込まれた無数の玉ゴロゴロと動き回る仕掛けになっている。
その醜悪な物体を見て声をあげたのは理緒のほうだった。
「パパ、そんな変なモノは仕舞って。私、復讐なんてしたくない。もう冴子さんのしたことは忘れるから」
「冴子はパパに関係を迫られて理緒を陥れて人身御供にしたんだ。赦しちゃだめだ」
二人のやり取りを聞いていて、竹中が冴子と俊介の仲のことを理緒に知らせていないことに気づいた。竹中が何らかの意図をもって相関図を明かしていないのだろう。復讐であるならばその関係を一番に列挙して理緒を煽り立てるはずだ。
「パパ、お願い冴子さんを赦してあげて!」
「おいおい、パパは理緒のためにお膳立てをしてあげたんだ。パパの善意を受け取れないのかな」
「パパ、もうこんなことするの止めて! 私、俊介君のことだってもう諦めるって言っているのに……」
「理緒、パパのいうことが聞けないのかな。ふふふっ……」
片頬をあげて嗤う竹中の表情を見て理緒が叫んだ。
「それはイヤ! パパ、お仕置きはしないで!」
「それならパパの言うことに従うんだね?」
「――分かりました……。パパの言うことに従うわ」



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