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サディスティック・スパイラル
【SM 官能小説】

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コックリング-8



あの日から一週間後に俊介が資料を抱えて冴子のデスクにやってきた。さも打ち合わせでもするようなふりをしながら小声でエイズ検査の結果が陰性だったことを伝えてきた。
「やけに早いわね。検体をとってから二週間はかかるはずだけど」
この手の話は仕事上よく使うので大きな声で話しても何ら問題はなかったが、俊介は首をすくめて小声でいった。
「保健所で調べるんじゃなくて、検体を送る方法があるんですよ」
最近は極秘にいろいろな感染症の検査をしてくれる機関があるらしい。
「冴子さん、今度の土曜日、あいてます?」
冴子は性急さに思わず吹き出しそうになった。
「今度はだめ。こちらか指定するまで待ってね」
果たして俊介が冴子とただ単に寝たいのか、あるいは本当にM男に目覚めたかは不明だが若い牡を発情させたことは確かなようだ。少しの間焦らして楽しむのもいいかもしれない。
ことあるごとに俊介は大した用事もないのに何かと、かこつけて冴子のデスクにやってきて盛んにアピールするようになった。同じ営業部に所属し部下の一人であることから、なんら不自然なことはなかったし社内でもイケメンで通っている俊介が自分にまとわりついてくることは冴子にとっても悪い気はしなかったが少々目立つようになってきた。

「――だよねぇ。俊介君も何考えているんだろう」
しばらく放置を決め込んでいた冴子はある日、給湯室の前で俊介の噂話にいそしんでいる女性社員の会話を耳にし、思わず足音を忍ばせて入口で佇んだ。
「そうだよねぇ。なんでよりによってあんなオバサマに尻尾振っているんだろ」
「仕事なんかいい加減だったのが急に熱心になっちゃってさ」
「何かあったんじゃない?」
「やだー! あんな可愛い彼女がいるのに!?」
「年増の魅力ってヤツ!」
「うわぁーキモイ! 絶対、リオのほうが可愛いよね」
(リオ?……その名前は社内では庶務課の相原理緒しかいない。確か豊満な身体のわりには幼い顔つきで、男性社員に人気の子だ)
「身体だってリオのほうが抜群にいいのにね」
(間違いない。相原理緒だ)
そこまで聞いて冴子はヒールの音を響かせて給湯室にずかずかと入って行った。二人の若い女子社員が血相を変えて部屋を飛び出しって行った。
(俊介のヤツ彼女がいたのね)
しばらく染みのついた壁を見つめていた冴子はやがてニンマリと笑った。俊介に対する処置を思いついたのだった。




ネット通販では世界のあらゆるものが手に入る。輸入雑貨の店舗には意味の解らない怪しげな商品ぞろぞろと並べられていた。海外での性的な事情は疎いが日本より男性のマゾヒストがかなり多いようだ。
特にイギリスでは高学歴の男性により顕著にその傾向があることを冴子は最近になって知った。なんでも幼少の頃に家庭教師から鞭で打たれることによるトラウマからくるそうだ。
商品の説明を読んで、やっとその扱い方が分かるものがほとんどだ。もともとは医療器具だったものが、その手の商品に使われることが多い。
排尿を強制的にさせるカテーテルは男性性器から細いノズルを膀胱に差し入れるものだ。その挿入時の痛みは半端なものではないことは冴子も多々耳にしていた。そんな痛みを伴うモノさえマゾヒストにとっては快感に変わるものらしい。
“尿道プラグ”と名付けられた商品に目がとまった。長さが5センチほどの釘のようなプラグをペニスに差し込むらしい。ちゃんと管になっていてM男が普段も刺しているものだと説明されている。
冴子はプラグの胴体が何段か凹凸のある上級者向けのプラグを選んだ。先端部に真珠の玉ほどの球体がついているおしゃれなモノだ。最近の冴子はこういった商品を見たり、俊介の苦しむ姿を想像するだけでジンワリと湿ってくるのだった。



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