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サディスティック・スパイラル
【SM 官能小説】

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コックリング-3

ホテルの地下にあるBarは巨大な洞穴のようだった。カウンターの内側に蝶ネクタイをしたバーテンが一人立っている。だがバックスペースには数人の補佐がいるのだろう。
当然込み合ってくれば、いつの間にやら第二、第三のバーテンが最初からいたような顔でシェーカーを振っているに違いない。
夜8時ちかくになろうとしているが、未だに客は冴子と俊介だけだった。客がやってくるのは10時を回った頃になるのだろうか。
強いアルコールで作ったカクテルは甘美な毒だ。毒みをしながら注意深く飲まなくては危ない酒。二人はそれぞれの華やかな色のついたポワゾンであらためて乾杯した。
冴子は背もたれのないスツールに足を組んで俊介の方に向きかげんで座っていた。背筋をのばすと胸と臀部が強調される。俊介の目が時々重ねた腿を盗み見しているのをわかってそうしていた。
「飲むと熱くなるわね」
冴子はジャケットを脱ぎウエイターに預けた。白いシャツの下から盛り上がる胸に俊介が戸惑っている様子が見てとれる。おそらく冴子の真意を測りかねているのだろう。もし前回同じ状況なら、俊介は一気に攻め込んできたことだろう。
だが立場が逆転して今は冴子が責め時になっている。妖しいカップルの雰囲気を察して、カウンターから離れたこところでバーテンが素知らぬ顔でグラスを磨いている。
「俊介君は年上の女をどう思うの?」
身体を反らせて後ろ髪を掻き上げて俊介の方を真っ直ぐに見て言った。
「年上……ですか……」
仕事の話と身構えていたのに、明らかに違う匂いが漂っていることに戸惑っている。
「ふうん、焦らすのが得意なのね。意地悪ね。私のことどう思っているの」
「ええっ! あの課長ですか……」
「そんな言い方するのを野暮というんでしょ。前の時みたいに口説いてよ」
「あ、あの時は……。でも……そうですね。ふふふ、色っぽいですよ」
ようやく俊介の警戒心が解けてきたようだ。
「ねぇ、わかるでしょ。三十路の女の寂しさ。私だって女なのよ」
「ええ、課長、いえ……」
「冴子さんでいいわよ」
「冴子さんは職責が重いから近寄りがたい存在です。でも私のようなものでもお役にたてれば喜んでお仕えしますよ」
俊介は酔いの回った顔に笑みを浮かべて冴子を見つめてきた。その笑みの裏には明らかに、男に飢えている年上の女に恵みを与えてやるといった優越感が浮かんでいた。
「私とヤリたい?」
「えっ!」
俊介はジワジワと回りを埋めていき、ホテルに行くように仕向けるつもりが、ストレートに欲望の開示を求められて戸惑った。自分がリードする立場だと思っていたのが突然断ち切られて面食らう。どう答えていいものか思案している間を与えず冴子が先手をうった。
「貴方を貪りたいの。そして貴方にも身体の隅々まで貪ってほしい。二人だけの大事なプロジェクトを実行してほしいわ」
俊介がカウンターに向き直り、テーブルのグラスを手にしてダイキリを一気に飲み干した。



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