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サディスティック・スパイラル
【SM 官能小説】

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第一章 ポンプ-28

23

冴子のデスクの後ろで社員数人が立ち話をしている。この会社ではチョッとした打ち合わせなどが会議室ではなく、通路や仕事場でちょくちょく行われていた。冴子の後ろで今行われているのは、営業部と技術部の折衝らしい。どうやらこの打ち合わせに小宮山も参加しているようで声が聞こえる。
このところ小宮山がやたらと営業部に現われて積極的に社員と話し合う姿を見かける。今までめったに自分の作業場から出てくることのなかった小宮山がやけに目立つようになった。冴子は小宮山と目を合わさずにやり過ごしていた。完全に立場が逆転してしまったようだ。
「そうですよね、冴子さん」
いきなり小宮山が背中越しに冴子に話しかけてきた。
冴子が振り向くと、その場にいた社員が皆一様にびっくりした表情をしている。営業部の鬼と呼ばれている冴子は皆から、片桐さんと苗字でよばれることはあっても名前で呼ばれることなどない。ポンプ屋と陰口をたたかれている小宮山がいきなり名前で呼んだことに場が凍りついたようになっていた。
冴子は何事も無かったように再びデスクに向かったが顔が強張っているのが自分でもわかった。その場にいた社員たちは冴子が小宮山の無遠慮な発言に怒ったと勘違いして、そそくさと俄か会議を解散してそれぞれの持ち場に戻って行ったようだ。
冴子は小宮山が日に日に自分に対して尊大な態度をとることに頭を悩ませていた。自分のマゾヒズムはもう完全に認めざるを得なかった。ポンプで局所を吸引されると強いエクスタシーの波に打ちのめされてしまう。一度つけられたMの刻印は一生背負わされてしまうのか……。
だがその一方で、小宮山にかしずく自分などとても考えられなかった。どうしても小宮山は、ご主人様と崇める対象ではあるはずもなかった。このまま放置しておけば小宮山は冴子に、また躾けをしかけてくるだろう。呼び出されれば、淫責を受け意のままに操られてしまう。そして、調子に乗った小宮山が、いつか皆の前で冴子を自分の所有物であるかのようなことを言い出しかねない。
冴子は小宮山を黙らせる手段はないものかと思案を巡らせた。



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