デアイトサイカイ-9
「出過ぎた真似を致しました」
再び深々と頭を下げたノアに、リュディはとんでもないと首を振る。
「私こそ……お気遣いありがとうございます……」
リュディがお礼を言うと、ノアはニッコリ笑ってお茶の準備を始めた。
ホッとしたリュディはテオの視線を感じて顔を上げる。
目が合ったテオは上手くいったな、とウインクした。
思わず赤くなったリュディは慌てて視線を反らし、テオ側の頬に手を当てて隠す。
「お待たせ、テオドア♪」
丁度ランスが戻って来たので、テオはリュディの初々しい仕草には気づかなかったがパルはバッチリ見ていた。
「う〜ぶ〜」
ニヤニヤとからかうパルを少し睨みつけたリュディだったが、その目はどこか嬉しそうだった。
ノアが準備したお茶は砂漠の真ん中とは思えないぐらい上等なものだった。
お菓子のクッキーに至っては焼きたてのように、ほんのり湯気が立っていた。
「すっごぉい、美味しそぉ」
固形物が食べれないパルだったが、これは食べてみたいと思わせる程見た目も美しい。
「遠慮なくどうぞ」
見た目だけじゃなくて味も極上ですよ、とノアは勧める。
とりあえずお茶を口にしたパルはパァッと顔を輝かせた。
「お〜いし〜♪」
お茶の味が濃いのに全然渋くなく、逆に爽やか。
甘党のパルだったが甘味料が入ってなくてもこれはハマりそうだ。
「んっ……クッキーも美味しい……」
外はさっくり、中はふんわり、口の中で溶けて無くなるような食感は初めて味わうものだった。
「それはテオドアさんのお父上に教わったんですよ」
ノアの言葉にパルとリュディは目を丸くしてテオに顔を向ける。
「んあ?ああ……親父はパン屋やってて、焼き菓子とかも作ってっからな」
手広くやってはいないが、地元では有名で近くの貴族も買い付けに来るくらいらしい。
「テオとランスのお家は近所なの?」
幼馴染みという事は家が近い筈だ。
テオの家にパンを買い付けにきていた貴族のお坊っちゃん、という感じか。