デアイトサイカイ-6
こんな挨拶をするなんて、ランスの身分は高いらしいとパルは判断する。
「ふうん?そうなんだ?アタシはパルティオ。パルって呼んでね」
テオの友達なら危険人物ではなかろう、とパルは気楽に挨拶を返すが、テオはハグされた姿勢で固まったままだった。
「テオドアも隅に置けないなあ、こんな可愛らしい恋人が居るなんて」
「あはは、恋人じゃないよ。仲間」
パルは最近会ったんだと適当に説明する。
そして、固まったままのテオにもう1人の人間が近づいた。
「お久しぶりです。テオドアさん、こんな所でお会い出来るとは思いませんでした」
フードを外しながら見上げて挨拶してきたのは、上品にカットされた蜂蜜色の髪に紫色の瞳の少年。
「……ノア……」
「ええ」
「なんで?」
「例によってランス様のお目付役です。今、砂漠の植物を調べるのにハマってまして」
ノアと呼ばれた少年はハアと溜め息をついて肩をすくめる。
「テオドアさんはどうして砂漠に?」
「いや……ちょっと家出して、そのまま冒険者に……」
「はあ、成る程……まあ、立ち話も何ですしお茶でも用意しましょうか?」
ノアの声が耳に届いたランスは、ぱっと立ち上がった。
「そうだった。まずは荷物を降ろそう。再開と出逢いを喜ぶのはそれからだ」
ランスは鼻歌を歌いながらテキパキと荷物を降ろし、テントを立て始めるのだった。
病人が居る、と説明するとランス達はテオ達のテントから少し離れた場所にテントを立ててくれた。
寝ていたリュディも外の騒がしさに目を覚まし、テオが偶然にも幼馴染みが来ていると話すと、お茶には呼んでくれと伝える。
羽馬をブラッシングしてやり、食べ物を与えて落ち着いたランスとノアはお茶とお菓子を準備してテオ達のテントにお邪魔した。
「はしたない格好で申し訳ありません」
どうも高い身分の人らしい、とパルから聞いていたリュディは失礼にならない範囲で身支度を整えてランス達を迎える。
「これは……なんとお美しい方だっ!」
リュディを一目見たランスの動きは素早かった。
パルの目でも捉えられず、気がついたらリュディの横に座り彼女の手を両手で握っていた。