デアイトサイカイ-1
砂漠都市エザルから少し離れた小さなオアシスに、急拵えのテントがある。
そのテントの中でリュディは昏々と眠り続け、彼女の看病をしながらパルは2人の出会いをテオに話していた。
「……それから?」
テオはリュディを見つめながらパルに先を促す。
「暫くは2人ともまともに動けなくて……私も魔物の身体を維持できなくてねぇ……人間形態の方がエネルギー消費も少ないし、森の中にある荒ら屋で1ヶ月ぐらいかな?療養してた」
その時、パルは自分が固形物が食べれなくなった事に気づいた。
脱出時にエネルギーを消費し過ぎたのだ。
それから試行錯誤して、辿り着いたのが人間の『精力』……つまり、パルが『精』を食べるようになったのは結構最近の事なのだ。
「成る程ね……どうりで色々と慣れてないワケだ」
50年以上生きている割には世間知らずな所とか、『精』を食べるくせに性技が未熟な所とか。
「どうせ未熟ですよぉだ」
拗ねて頬を膨らますパルは、すっかりいつものパルに戻っていた。
テオは眠るリュディを見つめたまま苦笑する。
「これからどうすんだ?」
「ん〜?予定通り……ファンに行くつもり」
「ファンに?」
ファンと言えば世界の中心にある島国。
西の大陸にある魔法大国ゼビアと親交が深く、魔法学校があったり他にも専門的な学校があったりする。
昔は交易の中心国として栄えていたが、最近では学都としても栄えていた。
「……ファンには……魔導師様もいらっしゃるし……専門知識が豊富だから……」
寝ていた筈のリュディが呟き、パルは彼女に目を向けた。
「リュディ、気がついた?大丈夫?」
「……うん……」
リュディはゆっくりと身体を起こし、軽く頭を振る。
「はい。薬」
すかさずパルが水筒と紙に包まれた薬を渡し、リュディは慣れた様子でそれを飲んだ。
「……私の……身体に居る吸血蔦を休眠状態にさせる……」
「へえ」
大して驚いてないテオの様子に、リュディは溜め息をつく。
「……どこまで話したの?」
リュディ的には絶対知られたくなかったのに、ペラペラとバラされてリュディはパルを睨んだ。
「えっとぉ……出会いから今までの事……?」
パルは小さくなってリュディを上目遣いで見上げる。