投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

曼珠沙華
【SM 官能小説】

曼珠沙華の最初へ 曼珠沙華 6 曼珠沙華 8 曼珠沙華の最後へ

(前編)-7

何十年も死に絶えたペニスが、なぜか生き返るようなかすかな息づきと微熱を持ち始めていた。
こんなことは今までなかったことだ。指先でペニスの鈴口に触れ、亀頭のえら縁をなぞりなが
ら、肉幹を掌でゆっくりと包み込む。


「谷 舞子」というあの女が無性に欲しかった…。

あの女によって、妻との遠く懐かしいひとときにふたたび浸れるような気がした。私は彼女を
自分自身の肉体の奥に描きながら自らの性を慰めようとしていた。

おそらく、妻を失ってから初めて自慰なのだ。掌で皺が刻まれたペニスの薄い包皮をゆるやか
にこすりあげる。包んだ手の皮膚に萎えたペニスの包皮が粘りつく。肉芯に微熱とかすかな
堅さを含み始めたペニスは、いつのまにか鉛色の鈍い光沢を虚ろに放ち、亀頭の先端は、まる
で涙がこぼれたような小さな露が滲み始めていた。



眠った裸の女と一夜が過ごせるという古い旅館は、老人ホームに近い海岸から林の奥の斜面を
登った小高い場所にまるで死んだように建っていた。

やっとその場所にたどり着いた私は微かに息を切らせる。波音だけが聞こえる夜の闇は漆黒に
塗り込まれ、建物に被さるような樹々に月が淡い光芒を宿らせている。


旅館の玄関で私を迎えたのは、このあたりでは見かけない小柄の老婆だった。あずき色の着物
を纏った老婆は、疎らに抜け落ちた白髪がそそけだち、乾首のような小さな顔の窪んだ眼孔の
奥には、凍りつくような陰気さと狡猾さが澱んでいた。鶏ガラのような色痩せた手足は血の気
のない病的な白さをもち、まるで死人の世界から這い上がってきたような姿をしていた。


「お待ちしておりましたよ…女はすでにご用意させていただいています…若い女より少し歳の
いった女がよろしいということでございましたね…」そう言いながら老婆は私を森閑とした家
の中に導く。

「女は裸にして縛っております…もちろん、縛られたまま薬によってぐっすり眠っております
…けっして女を起こそうとなさらないでくださいね…ええ、あなた様が今夜ごいっしょに過ご
すあいだ、女はけっして目を覚ますことはありませんよ…」

老婆は薄暗い廊下の突きあたりの部屋へと私を案内する。打ち寄せる波の音がどこからか聞こ
えてくる。


「女のからだにお手で触れるのも、肌を唇で愛撫してあげるのもかまいません。指や舌で女の
体のどの窪みをお楽しみになるのもかまいませんが、殿方のものでの性交は絶対なさらないで
ください…もちろん、彼女の口の中やお尻の穴での性交もいけません…もっともここを訪れる
殿方は、男性としては安心できるお客様ばかりでございますが…」

老婆はあらためて私を見つめると、皮肉を込めたように薄く笑った。

安心できる客とは私のような性的不能の老人ばかりということか…私は心の中で深いため息の
ような苦笑を洩らす。



曼珠沙華の最初へ 曼珠沙華 6 曼珠沙華 8 曼珠沙華の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前