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曼珠沙華
【SM 官能小説】

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(前編)-4

妻の死因に不審を抱いた警察は、妻殺しの罪によって私を逮捕した。取り調べを受け、裁判に
かけられながらも私は妻と自分のあのときの状況をうまく説明ができなかった。あの時間の記
憶そのものが失われていたような気がした。裁判の結果、妻の病気を悲観した思い余った行為
だということで情状酌量の余地を認められながらも、私は懲役七年の刑により刑務所に入れら
れた。そして、五年の刑を終えた後、私は釈放された。


ベンチに座っているその女は小さなパソコンを膝に広げ、なにやら指を動かし始める。
見知らぬ女に声をかけるなど、私はこれまで思ったこともなかったが、死んだ妻に似ているそ
の女に対して、胸が苦しくなるような思いに駆られ、思いきって女の隣に座って声をかけたの
だった。


「曼珠沙華の花がきれいだな…」何となく独り言のようにつぶやいた最初の言葉だった。

「ええ、鮮やかすぎて、怖いくらいですね」

見知らぬ老人から不意に声をかけられたというのに、彼女は私の言葉を愛想よく受け入れてく
れた。それがとてもうれしかった。

「怖いくらい悲しい色かな…そう言えば、曼珠沙華の花言葉は、悲しい思い出という意味だっ
たか…」そう言いながら私は彼女の顔を穏やかに覗き込んだ。


「谷 舞子…」それが女の名前だった。


女の瑞々しい白いうなじから、甘く熟れた匂いが漂ってきた。彼女の蠱惑的な薄い唇に、私は
思わずひれ伏したいほどからだが疼き、情欲が昂ぶる息苦しさを久しぶりに感じた。それは、
確かに私が妻と初めて出会ったときに抱いた感情そのものだったような気がする。


黄昏の秋の陽光が女の衣服を透かし、しなやかな体のシルエットを描く。

彼女はいったいどんな乳首をし、どんな性器をしているのだろうか…そして、腋窩や乳首の表
面、湿った陰毛や薄紅色に縁どられた淫唇はどんな匂いがするのだろうか…私は、今すぐにで
も彼女のブラウスの胸元にかすかに見えたブラジャーに包まれた柔らかすぎるほどの乳房を掌
で包み込み、息吹始めた花蕾のような香りのする乳首を貪るように唇に含みたかった。そして、
滲み出る乳の雫を無性に啜りたかった…。

そんな恥ずかしい妄想を胸の内に秘めたまま、私はポケットから煙草を取り出し、ゆっくりと
火をつける。どこか深い優しさを湛えた彼女の笑顔が私の渇いたからだの中を和ませてくれる。


彼女がパソコンで書いているのは、ネットのサイトに投稿するために趣味で書いている小説だ
と言う。どんな小説を書いているのか読ませて欲しいと言ったが、彼女は恥ずかしげに首を横
に振った。

パソコンに向かう彼女の横顔は、どこか愛おしくなるほど結婚した頃の妻の面影と輪郭をもっ
ていた。私は、彼女が自分の死んだ妻と似ていることを告げると、彼女はどこか戸惑うように
小さく笑った。

この女だったら私は忘れていた性を交わすことができそうな気がした。そして、亡き妻に対す
る思いと同時に、私は自分がこの女を抱きたい欲情まで思わず口にしそうだった。



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