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曼珠沙華
【SM 官能小説】

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(前編)-2

目の前の薄紅色の肉襞が貝肉のようによじれながらゆるみ始めると、肉塊の翳りが彼女の膣洞
の仄白く曇った灯りをさえぎる。その翳りは鬱陶しい粘液を引きずりながら、子宮に続く空洞
の果てまでもぐり込んでいく。

それはあたかも私の中の欲情の重力が、その翳りを堅く凝縮させ、蜜汁にまぶされた肉襞の奥
に潜む臓腑を、今にも引き裂こうとしているかのようだった。


どこからか死んだ妻がよく聞いていた美しいアリアの旋律が流れてくる。その音楽は薄蒼い女
の柔肌にひろがり、恥丘を越えて曼珠沙華の花弁の奥へと潜んでいく。

やがて膣孔の奥深くから聞こえる蜜汁の吐息に肉塊の翳りが揺らぎ、溶け合う互いの肉汁の澱
みの中で性の傀儡たちがひしめき合う。そのとき、ふと女のからだが消え、曼珠沙華の花の中
にひとり残された私の中には、性の沈黙と欲情のぬけがらだけが虚ろに漂っていた…。



私があの女の夢から目を覚ましたとき、部屋の外はすでに黎明の光に包まれていた。

ベッドから起き上がり窓を開ける。近くの海の湿った潮の匂いが、すっと鼻腔に漂ってくる。
窓の外の土手には、淡い朝の光を吸い込んだ曼珠沙華が色あざやかに咲き乱れ、かすかな海風
にそよぎたつように揺れていた。


この老人ホームに入って五年がたつ。じわりじわりと見えない病魔に侵されるからだも、あと
どれくらい生きていられるのか…医者ははっきりと私に余命を伝えることはない。死ぬのが
怖いわけではない…。生きる意味を失うことを私は恐れ続けていたのだ。


それにしても七十二歳になった私が、異性に対して性的な夢を見ること自体に思わず苦笑する。
夢の中の女は、あのとき公園で出会った女だった。その女は確かに死んだ妻に似ていた。似て
いるのに違う女…。そして、妻以外の女の夢を見たのもいつのことだったか…いや、私は妻を
失ってからというもの異性の夢すら見たことはなかったのだ。




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