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アイツがあたしにくれた夏
【コメディ 恋愛小説】

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恋人ごっこ-8

甘々かと思えば、こうして笑い合えたり、相手のいろんな姿を知る。


駿河と一緒にいるだけで、ホントに楽しくて仕方がない。


二人してしゃがんで、手持ち花火をばらしながらこっそり駿河の横顔を見つめた。


これが、付き合うってことなのかな。


なんちゃって恋人だけど、駿河の横で笑う自分がくすぐったくてたまらない。


あー、照れ臭くてなんだか挙動不審になってそう。


彼にそれを悟られるのが恥ずかしくて、自分の気持ちを意識しないようにしようと、新しい花火を手に持って、コンビニで買った100円ライターに手を伸ばす。


すると、ニュッと横から伸びてきた駿河の手が視界に入ってきた。


それは躊躇いもせずにそっとあたしの手に重なり、あたしは「ひゃっ」と小さい悲鳴を上げて駿河を見つめた。


しばしの沈黙と、重なる視線。


花火の残像で駿河の顔がチカチカして見えるけれど、その表情はやけに神妙なのは伝わってくる。


力が込められてきた重なった手に、あたしの喉がゴクリと鳴った。


二人を照らすのは公園内の薄暗い電灯だけ。


弱々しい光の下、駿河が小さな声であたしの名前を呼んだ。


名前を呼ばれたのに返事ができなかったのは、駿河が真剣そのものな表情であたしをじっと見つめていたからだ。


真ん丸な彼の瞳は、街灯の光がキラッと輝いていて宝石みたいだった。


恋愛ドラマばっかり観てきたあたしにとって、こういうシチュエーションの次の展開ってやつが容易に想像できる。


楽しくじゃれ合ってた二人が、ふとしたきっかけで沈黙になってしまう。見つめ合う二人。ここまでくれば……。


重ねて来た手にさらに力が加わり、駿河の顔がゆっくり近付いてくる。


誰に教わるわけでもないのに、キスされそうになる時に目を瞑ってしまうのは本能みたいなものなのかな。


まさか、自分がこんなにスマートに受け入れられるとは、と思いながらあたしはゆっくり目を閉じた……その時。




――応援してくださいね。




ふと、里穂ちゃんがニッコリ笑いながら言った言葉が突然鮮明に過ぎってしまった。




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