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アイツがあたしにくれた夏
【コメディ 恋愛小説】

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恋人ごっこ-7

こうして始まった恋人ごっこ。


コンビニ寄って花火買って、そこのすぐ側にある、ブランコだけが設置されてる小さな公園で、あたしと駿河は二人きり。


もう、出だしの恋人繋ぎと下の名前呼びだけでノックアウトされかかっているというのに、ここでもまたさらにダメ押しの一撃を食らって戸惑ってばかりのあたしだった。


だって……。


「ホラ、火が点いたぞ」


「う、うん。ありがとう」


勢いよくカラフルな炎を噴き出す手持ち花火をあたしに渡してくれる駿河。


久しぶりにやる花火にすっかりはしゃいでいたあたしは、一人でキャーキャー騒ぎながら、花火を楽しんでいた。


最初のうちは久々の花火にテンション上がりまくりで、楽しんでいたのに、ふと駿河と目が合った時に彼が花火をあまりしていないことに気付く。


ニコニコ笑うだけの駿河に首を傾げながら、


「花火、やんないの?」


と訊ねると、なんと奴は、


「お前が楽しそうにしてくれれば、それで十分なんだ」


なんて歯の浮くようなセリフを平気で言ってのけたのだ。


もちろんこんなセリフ言われたことのないあたしにはもう赤面もので、恥ずかしくてたまらなくて、


「ちょっと! そんな恥ずかしいこと言わないでよ!」


とムキになっても彼はイタズラっぽく笑うだけ。


あたしが恥ずかしがるのが面白くて、わざと甘い言葉をかけてきてるのはわかるんだけど、心なしかあたしを見つめるその表情が、愛しい人を見つめるそれと何ら遜色ないような気がして、勘違いしそうになる。


だからと言って甘さ全開かと思えば。


「あーっ、小夜! 火消えるって! 早く他の花火に火点けろ!」


勢いを失っていく花火に、駿河の焦る声が響く。


「ちょ、駿河っ、花火バラしてないじゃん! 早く早く!」


「うあ、マジか!? ちょっと待てって、火消すなよ!」


「あー、消える!! 早くってば!」


ショボショボと尻切れトンボみたいに静かに燃え尽きていく花火を見つめながら、駿河に代わりの手持ち花火を催促するけど、束になった花火をばらしてる間に、ついにあたしが持ってる花火は光を失ってしまった。


すっかり火が消えてしまった手持ち花火と互いの顔をと見こう見しながら、視線が絡まる。


なんだかそれがやけに照れ臭くて、あたしはついついおどけてしまう。


「駿河、アウトー」


「ガキ使かよ」


呆れながらも笑ってくれるその表情が嬉しくて、あたしもまた大きな口を開けてクスクス笑い出した。









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