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春眠の花
【フェチ/マニア 官能小説】

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に乃花-5

 その夜、私は久しぶりに自分の体を慰めた。

 頼れるものが指しかなくて、少し不満を感じていると、引き出しの奥のことを思い出した。そこに避妊具が隠してある。

 とにかく膣を満たしたかった。

 適当なものが目に入ると、それに避妊具を被せて、大胆に挿入する。

「んっ、んはっ、ああ……」

 最初はくすぐったくても、しだいに快感へと導いてくれる。

 それこそ場所も素材も選ばず、キッチンでは人妻の一人遊びを妄想して、ベッドルームでは上司と不倫をする新入社員の淡いセックスをイメージした。

 素手、素足、素顔、素肌。素の自分の性欲のありかを求めて、全身に眠る性感帯をたぶらかしていった。

 私はずっとこんなオナニーがしたかった。

 男の人が想像するよりもっとアブノーマルで、レイプよりも凶悪な快感たち。

 一人暮らしの女性の部屋でこんな場面に遭遇したら、誰でも正気ではいられないだろう。

 慰めというにはあまりにも歪んだ行為だと思う。
 相手のいないセックス、最低で最高な自慰行為。

 いつまでも消滅しない性欲をなだめるように、それは果てしなくつづいた。

***

***

「それじゃあ、静香さん、そろそろ行かないといけないので」

「あとのことは気にしないで。終わったらまた連絡をちょうだいね」

 私は午前の仕事を途中で抜け出し、婦人科検診のために『いずみ記念病院』へ向かうところだった。

 そこへ突然、何の前触れもなく、彼がお店にあらわれたのだ。

 もう二度と顔を合わせることもないだろうと思っていたのに、彼のほうは私の機嫌を取るような笑みを浮かべて、やあ、と手を上げた。

 風間篤史、私の別れた夫だ。

 数年ぶりに会う彼はどこか垢抜けた感じがして、以前よりもこけ落ちた頬やウエストも引き締まり、見違えた。

 人目を避けてお店の裏手へまわると、彼は立ち話をはじめた。

「まだこの店で働いていたんだ?」

「急にどうしたの?あなたがこんなところに来るなんて」

「仕事の邪魔をしてしまって、すまない。じつは奈保子に話しておきたいことがあるんだ。まあ、今さらどの面下げてって思うだろうけど」

「話なら、あの日に終わったはずでしょう?」

「違うんだ。落ち着いて話すから、落ち着いて聞いてくれ」

 彼の真剣な眼差しに、ある種の決意が見える。

「僕らが別れたいちばんの原因は、やっぱり僕のほうにあったんだ」

「それはだからあなたの浮気のせいだって、私がそう言ったじゃない」

「それはわかっている。だけど僕が浮気にはしってしまったのは、僕自身の体質に原因があったんだ。それを調べてくれるようにと、病院で検査を受けたことがある」

「病院?」

「精液検査だよ……」

 彼の言わんとしていることはすぐに理解できた。


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