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春眠の花
【フェチ/マニア 官能小説】

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い乃花-9

「ここではっきりさせておきましょう。あなたの不妊治療はまだ終わっていません。ここからがほんとうの意味での治療なのです」

「先生の言っている意味がまったくわかりません。もう帰ります。お金は払いますから、はやく私の体を元通りにしてください」

 泉水医師はマスクの裏でため息をつくと、佐倉看護師へアイコンタクトを送り、その鋭い眼球をまた私に向けなおした。

「彼の名前は確か、篤史さんとか言いましたね」

「彼がなにか?」

「あなたのご主人でないことは我々も承知しています。驚きましたか?」

 私はまんまと驚かされた。

「あなたの個人情報はすべて、病院側も共有しています。否定的な態度はやめておいたほうが安全だと言っておきます」

「まさか、彼にもひどいことをしようとしているんですか?」

「その逆です。勘違いしないでもらいたいですね。人体にはまだまだ謎の部分が多い。そして僕は医師だ。今回の実験が成功すれば、東洋医学でも西洋医学でもない、まったく新しい風が吹き込まれることになります。あなたはそれに関われたことを、きっと誇りに思うでしょう」

「実験……」

 私はようやくすべてを理解した。
 できすぎた展開ではあるけど、どうにも笑えない。

 分娩台の上の私は、もはや生きた標本だった。

「あなたの子宮を満たしているのは、人の体液とほぼおなじ塩分濃度のある水溶液です。先ほどそれをカテーテルで吸引したので、しぜんにお腹が萎んでくるはずです」

 彼の言う通り、私の体格は妊婦とは呼べないほどのくびれを取り戻しつつある。

 器具によってひらかれたままの膣はどくどくと濡れて、私の思いとは裏腹に快楽の穴に変わり果てた。

「ねえ、看護師さん。あなたなら助けてくれますよね?」

 佐倉麻衣にすがってみた。

「ごめんなさいね。あなたと代わってあげたいんだけど、私にもこの研究の成果を見届ける義務があるから」

「そんなこと言わないで」

「海外に比べると、日本の不妊治療技術はまだまだ遅れているんです。あなた一人の協力で、国内の少子化が改善されるかもしれません。少し大げさだけど、そういうことなんです」

 穏やかではあるけれど、それは紛れもなく救いの言葉ではなかった。


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