ムカシムカシ-3
一番の望みは旦那様が二番目の奥様を嫌う事です。
奥様は良い事を思い付いてクスクス笑いました。
「……男の子に……出来ますか?」
そしたら奥様の子がお妃様になれますし、旦那様も悲しみません。
既に居る跡継ぎも奥様の子なので、二番目の奥様の子は特に注目される事は無いでしょう。
『ん〜…6ヶ月でしょ?ちゃんとした男の子に成るかなぁ』
「どういう事ですの?」
『今から性転換の呪いをかけても遅いかもって事。下手したら両性具有になるよ?』
「まあ!それは素晴らしいですわ!是非、お願いします」
それは好都合です。
そんな子が産まれたら一族の恥として抹殺され、二番目の奥様も忌み子を産んだ女として、実家に返されるでしょう。
それなら旦那様の命令での抹殺なので旦那様も悲しまないし、跡継ぎとお妃様を産んだ奥様は大事にされます。
『分かった。約束は守ってよ?』
「承知いたしました」
奥様は魔物に深々と頭を下げて地下牢から立ち去りました。
それから4ヶ月後……同じ日に2人の赤ちゃんが産まれました。
一番目の奥様が産んだのは可愛らしい女の子。
しかし、二番目の奥様が産んだのは見た目は美しい女の子でしたが、男性器と女性器を合わせ持った赤ちゃんでした。
忌み子の出生は隠され、二番目の奥様の子は死産とされました。
「……ふふふふ……」
その後、二番目の奥様は心を病んだとして実家に帰り、一番目の奥様の望む結果になったのです。
一番目の奥様は可愛い我が子を腕に抱いて笑います。
魔物との約束はすっかり忘れていました。
しかし、一番目の奥様の知らない事がひとつありました。
二番目の奥様が産んだ忌み子は、密かに二番目の奥様の実家に連れられて育てられていたのです。
旦那様は、いくら忌み子とはいえ自分の子供を殺す事が出来なかったのです。
なので二番目の奥様の出産を担当した産婆に頼み、秘密裏に事を進めたのです。
忌み子は二番目の奥様の実家で大事に育てられました。
何故なら、忌み子は忌み子である以前にとても美しかったからです。
更に忌み子は非常に聡明でもありました。
あまり目立ってはいけない自分の立場を理解し、医者や魔法使いに頼る事を良しとせず、自分で治せるものなら治したいと勉学に励みました。