ムカシムカシ-14
寄生された人間は幻覚により泡沫の世界の住人となり、ただ養分を吸われ続けるのです。
「おお おぉぉ おおおぉぉ おお」
お屋敷のあちこちでゴロツキ達の呻き声が響きます。
リュディはその様子を黙って見ていました。
ランタンの炎がカーテンに移り、壁を舐めるように這い上がります。
それは異常繁殖した吸血蔦にも燃え移り、パチパチと音をたてました。
吸血蔦は炎から逃げようとのたうちますが、所詮は植物……寄生した人間ごと次々と燃え上がっていきます。
『リュディ!』
そこに、全身炎に包まれたパルが現れました。
柵にぶつけ続けた左腕は肩からもげて無くなり、ダバダバと血を流しています。
「……パ……ル……」
リュディはゆっくりとパルに目を向けてパルの姿を確認しました。
その瞬間、崩れるように床に倒れてしまいます。
『リュディ!っもうっ邪魔っ』
パルは残った腕で吸血蔦をなぎ倒し、倒れたリュディに近づきました。
『リュディ!リュディ!』
パルは鼻先でリュディを揺らします。
リュディはぴくりともせずに揺らされるままになっていました。
緑色に変化した髪に炎が燃え移り、パルは慌ててリュディを口にくわえます。
(逃げるのが先っ)
パルはリュディを口の中に入れて、燃え崩れるお屋敷から脱出しました。
お屋敷からはゴウゴウという炎の音と、吸血蔦に寄生されたゴロツキ達の呻き声が響きます。
耳にこびりつくような音を振り払うように、パルは大地を駆けました。
南へ……南へ……海を越えて、誰にも分からない遠くへ駆けるのでした。
‥To be continued‥