ムカシムカシ-1
少し昔のお話です。
東の方にとても大きな国がありました。
大きな国の王様には悩みがありました。
それは、王様には女の子しか産まれなかった事です。
王様にはお妃様以外にも10人のお妾様が居ましたが、産まれたのは女の子ばかりでした。
そんなある時、10番目のお妾様が元気な男の子を産みました。
王様も国の人々も大喜びです。
そして、お城から遠く離れたお屋敷も歓喜に沸いていました。
何故なら産まれた王子様のお妃様は、このお屋敷から産まれる女の子になる予定だったからです。
この大きな国では、争いが起こらないように王族と貴族間で婚姻する事が決まっています。
そうして血脈を繋ぎ、大きな国を治めているのです。
そして、順番的に次のお妃様はこのお屋敷の子になります。
お屋敷には丁度妊娠中の奥様が居ました。
占いによればお腹の子は女の子です。
普通ならその子が王子様のお妃様になるのですが、ひとつ問題がありました。
もう1人の奥様も女の子を妊娠していたのです。
一夫多妻が認められているこの国では普通の事ですが、一番目の奥様はとても嫉妬深い方でした。
旦那様が他に奥様を迎え入れた事がどうにも我慢出来なかったのです。
それでも、一番は自分だから……一番愛されているのは自分だから……と、耐えていたのですが、なんと同じ時期に2人共妊娠してしまったのです。
これには一番目の奥様はとても傷つきました。
一番、一番と自分に言い聞かせていたのに、旦那様にとっては一番も二番も同じだったのです。
一番目の奥様のプライドはズタズタです。
お腹の子と一緒に死んでしまおうかとも考えました。
しかし、旦那様は2人の妊娠をとても喜んでいたので悲しませたくなくて我慢しました。
子供が産まれたら変わるかもしれない……自分だけを見てくれるかもしれない……そう思ってお腹の子を大事にしました。
そして、王子様が産まれ、お妃様がお屋敷から選ばれると分かった時、苦労が報われると思いました。
王子様は1人です。
勿論、選ばれるお妃様も1人です。
絶対に自分の子が選ばれると思っていました。
しかし、旦那様の口から出た言葉は耳を疑うものでした。