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アイツがあたしにくれた夏
【コメディ 恋愛小説】

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最終電車-7

てっきり「うるせーな」みたいな憎まれ口を叩くのを期待していたのに、返ってきた駿河の反応は、というと。


「…………チッ」


う、うええっ、舌打ちですか!?


すっかり奴にビビってしまったあたしは慌ててフォローにまわる。


「だ、大丈夫だって!! 里穂ちゃん、きっとまた誘ってくれるはずだからこの次頑張ってデートすればいいんだから、ね!?」


吊革に掴まる駿河の腕をポンポン叩いて、慰めてやったつもりだけど、


「……それ以上言うんじゃねえ」


と、まるで今日の酔っ払いのおじさんに吐いたようなドスのきいた声であたしをジロリと睨んできた。


どうやらあたしのフォローは地雷だったようで、駿河はあからさまに大きなため息を吐いてしまった。


駿河にそんな態度を取られたのが初めてだったせいか、身体がビクッと強張ってしまう。


「あの……、ごめんね。なんか無神経なこと言っちゃったみたいで……」


おずおずと頭を下げても、駿河は完全にシカト。


全く言葉を発してくれなくなった奴に、涙がジワリと滲んできた。


……何よ。なんで訳もわからずに機嫌悪くなるのよ。


あたしを酔っ払いから助けてくれた、あの頼もしい駿河の姿が色褪せていく。


せっかく駿河の優しさに気付くことができたのに、ひどいよ。


込み上げてきた涙を気付かれないように、汗ばんだ腕でごしごし擦ってあたしは俯くことしかできなかった。









俯いて黙っていると、横から低い声がボソッと聞こえてきた。


「……ったく、ニブいのもここまでくるとイライラすんな」


「…………!」


「ニブい」「イライラ」等の否定的なワードが断片的に耳に入ってきたあたしは、また身体がビクッと強張ってしまった。


ヤバい、かなりムカつかれてる?


もう怖くて、駿河の顔が見れない。


あたしが駿河から距離を置こうと、掴まっていた手すりに同化するようにしがみついて奴に背中を向けた、その時。


「…………ふ」


と、笑いが漏れる音が後ろから聞こえてきた。







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