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アイツがあたしにくれた夏
【コメディ 恋愛小説】

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最終電車-11

「うわっ!?」


咄嗟に防衛反応が働いたのか、つんのめった身体が倒れないように右足が前に飛び出す。


着いた先は、夜の湿気を含んだアスファルト。


なんとか転ばないように体勢を立て直したその時、背後でドアが閉まるアラーム音が鳴り響き、ゆっくりドアが閉まってしまったのだ。


自分がなぜかホームに降り立って、最終電車に乗り遅れしまったと認識するのに、所要時間数秒。


そして、ゆっくり最終電車が動き出すのを見送ってから、あたしの左手首を駿河が掴んでいることに気付く。


あたしの手首を掴む手から、順繰りに目線を上に持っていけば赤い顔ながらも、不敵に笑う駿河の顔が。


この状況に頭がついていかないあたしは、かろうじて聴覚と触覚だけが研ぎ澄まされている状態。


どんどん遠ざかる最終電車の走る音。駿河に掴まれた左手首。


これらが徐々に自分の置かれた状況を認識させていく。


ああ、そうか。


あたしがここにいるのは、駿河があたしの手を引いて、電車から引き摺り降ろしたからなんだ。


視線の向こうの駿河は、相変わらず不敵な笑みのまま、あたしを見下ろすだけだった。







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